トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーンの作品情報・感想・評価

「トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン」に投稿された感想・評価

ドント

ドントの感想・評価

4.0
 1980年。ウッウッ……泣いてしまった……。戦争やその他の出来事で心を病んだ兵士を収容して様子を見る古城の精神病院……というか「経過観察小屋」みたいな場所にある日、新任の軍医 兼 精神科医が。彼は少し特異な方法で患者の心を柔らかくしていくのだったが。
 ゆるめな精神病院の雰囲気や難しいやりとり、それに乱暴にインサートされる謎めいたショットの数々に戸惑う前半。しかしそれらが後半、ガリガリと削るように回収されていく。「伏線回収」みたいな華麗なそれではなく、掴み取られ拾われていく。しかもシンボリックな美しさと一種の曖昧さを残したままで、である。すごい。
 冒頭以上の内容はあまり書きたくないので感想に困る。でもものすごく力強い映画だ。見かけ倒しだったり口ばっかりな力強さではない。地を這い泥を舐め、人の弱さと強さについてきちんと底まで考えた人にしか語れないような迫力がある。撮影も遊びが少なくガッシリとこの内容に向き合っている。
 それゆえに最後に起きるあの「応え」に、ただならぬ感動が宿る。私は軽々しく「感動」とは書かない。つまりこの映画にはそのくらいの強度がある。イロモノであり、カルト映画ではあろうけれども、そのようなレッテルを吹き飛ばす素晴らしい映画だった。ちなみにタイトルは「キラー・カーン」とプロレスラーみたくなってるけど、正確には「キラー・ケーン」である。
ベトナム戦争末期、まだPTSDのような病名が付けられていないであろう時代の話。
精神に異常をきたしたと思われる者を集めた古城の中に患者の治療、観察を目的とした軍施設が作られている。その施設に新しい精神科医として海軍大佐のケーンが赴任する、ケーン大佐は親身に患者たちの話に耳を傾けるが次第に他人が見た悪夢にうなされるようになり...
繰り返される問いかけ、
ロケットの発射直前に発狂した宇宙飛行士のカットショウとの会話が良い。「なぜ月に行かん」
最終的には全てが伏線になり最後に繋がります。命を賭して別の命を助ける実例はある、けれど辛い、とても辛い、やめてくれよ悲しい頭が痛い。それでもキラキラと輝くラスト。自分にとっては心の名作。
原作のセンター18はラストが違うらしいので気になります。

「誰だ?あんたは何者だ?人間にしては暖かすぎる」

カットショウの自らの問いの答えが
最後に天使だったのが美しかった。
勿論この後の『エクソシスト』への布石もそこかしこに見られるが、孤独の共有と暴力の記憶、その先に行き着くラストカットのストップモーションに泣く。
タケオ

タケオの感想・評価

4.3
 本作の舞台は、深い森の奥に佇む古城風の精神病院。そこは、ベトナム戦争で精神に異常をきたしてしまった帰還兵たちの社会復帰を目的とした療養施設だった。ある日病院に、新たな精神科医としてケーン(ステイシー・キーチ)という男が赴任してくる。はじめのうちは警戒されていたケーンだが、寡黙ながらも真面目で誠実な彼の姿に、患者たちは少しずつ心を開いていく。しかし、実はケーンにはある大きな秘密があった——。
 破天荒な言動を繰り返す患者たちと、ただ淡々とそれに対応するケーン。噛み合っているようで噛み合っていない両者のやり取りはまるでショートコントのようだが、物語が進むにつれて、次第に患者たちが実は狂っていないことがわかってくるのが『トゥインクル・トゥインクル・キラーカーン』(80年)の面白さである。患者たちは、実は誰よりも純粋で真っ当な存在だ。むしろ、真っ当すぎたといっても過言ではない。誰よりも真っ当だったからこそ、ベトナム戦争という地獄を経験してしまったがために、元の生活に戻ることができない。『デッドプール』(16〜18年)のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)や『ジョーカー』(19年)のアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス )とも通底する、「誰よりも正気ゆえに狂気に陥る」というパラドックスに患者たちは苦しめられている。『トゥインクル・トゥインクル・キラーカーン』は、「正気」と「狂気」の境界線を常にグラつかせ続ける。そして映画後半、誰よりも「マトモ」に見えていたはずのケーンが実は誰よりも壊れた人間であったことが明らかになることで、終始グラつき続けていた「正気」と「狂気」の境界線は遂に崩壊する。
 患者たちと同様に、ケーンもまたベトナム戦争という地獄を経験した人間だが、「狂気」の世界へと逃げ込んだ患者たちとは違い、ケーンは「正気」の世界に何とかしがみつこうとしている。しかし、患者の1人が「正気」の世界の人間たちからリンチを受けたことをキッカケに、遂にケーンは自らの「狂気」を解き放つ。ケーンが本性を露わにする場面は鑑賞者に一定のカタルシスを生じさせるものではあるが、それと同時に、悲壮感と遣る瀬なさが漂う場面でもある。「狂気」の世界に囚われながらも、それでも「正気」の世界にしがみつこうとした男が、「正気」の世界を生きる人間たちの「狂気」によって、結局は「狂気」の世界へと引き戻されていく。「もう疲れたんだ」そう呟くケーンの姿は、あまりにも切ない。
 「正気」の世界を生きる「普通」の人々と、「狂気」の世界を生きるケーンと患者たち。「真に壊れているのはどちらなのか?」と、『トゥインクル・トゥインクル・キラーカーン』は問いかける。患者の1人であるカットショウ(スコット・ウィルソン)が、最後にケーンのこと「天使」と呼ぶのも印象深い。恐らく「狂気」の世界で傷ついた魂を癒すのは、同じく「狂気」の世界で傷ついた魂だけなのだろう。
耐えて耐えて耐えて耐えてぶっ殺すってのが良いすよね。わらの犬もそうだけどこういうシチュエーションは高鳴る。

そしてあの終わり方最高!!!
あの表情も最高!!
鈴木清順作品「陽炎座」と同じく初めて観てほとんど何も理解できなかったシュール映画だけど、すごく無力があるので是非もう一度観てみたい。個人的の評価もいずれ上がると思う。今回はあまり楽しめなかったけどユニークで良い映画を観た気もする。
 エクソシストの原作者であるピーターブラッティの初監督作。※この後にエクソシスト3も撮ってます。

 本作の舞台は病んだ軍人を収容した精神病院であり、主人公のケーンはそこに新たに赴任する精神科医。非常に宗教色が強く、宗教に対して不勉強な私はまだ消化しきれてない。それでも役者の熱演も相まって伝わってくるものはある。頭のおかしい軍人たちが愛おしい。
イワシ

イワシの感想・評価

4.0
アメリカにあるとは思えない古城の精神病院を舞台に実は最も救いを必要としているステイシー・キーチと救いを諦め孤独に苛まれるスコット・ウィンソンとの交流に泣いた。しかし静的で切実なドラマと同じ空間で披露される狂気患者の滑稽劇には超笑った。
青山

青山の感想・評価

4.0

ベトナム戦争末期、戦場での体験により精神に不調を来たす兵士が増えていた。
古城を利用して開設された病院兼研究所に精神科医として赴任してきたケーン大佐は、患者たちと真摯に向き合い治療を行なっていくが......。


『エクソシスト』の原作者が原作と監督を兼任していて、ホラーではないですけど精神異常や宗教などテーマ的には確かにエクソシストっぽさもある作品です。

これ、すっげえよかったっす。

前半は城内の患者たちと対話をしていく微妙に噛み合わない会話劇でかなり地味だし眠くなっちゃうんですけど、「キラー・ケーン」の登場あたりからじわじわと面白くなって、まさかのアレ系を挟んでからのエモすぎる結末で一気に大好きな映画になってしまいました。
osaka

osakaの感想・評価

5.0
超傑作。ブラッティの、何故か前半ゆっくりで後半あがるそのスロースターター感にはまりそう。キリスト教観とか色々ありますが、複雑そうなキャラに見えるステイシーキーチは単なる普通の超良い人ってだけで、しかしそんな人だから暗い過去があるのはおかしいとかいうツッコミは成立させないよってとこが本作の重要ポイントのように思える。だからこそ暴走族はあんなにデフォルメされてるわけで。

なんか前半が退屈という意見が多いように見えるが、他の精神病院映画に劣らずすばらしい描写の数々。多くの素晴らしい映画では共時的であるのに対して、本作ではそれに加えて通時的な狂気も感じさせ得ているのがすごい。中世の古城で黒人のスーパーマン(2020年のフーデッドジャスティスの誕生を待たねばならない)が空飛んでる脇で帰還兵がハムレットの話をするなんて超面白い。あと霧も良いし、なんか丁度つぼにバッチリな大きさのうなだれた銅像も中々渋い。

「99%の絶望と、1%の希望」を示すラストカット。あれほど美しい幕切れはまだ見たことがない。あとジェイソンミラーってやっぱり良い俳優だよなと改めて。
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