風の中の牝鷄の作品情報・感想・評価

「風の中の牝鷄」に投稿された感想・評価

観ていて嫌になるくらい、男のどうしようもなさが描かれる。

『東京物語』を観た時にも思ったが、戦争さえ無ければ…。

石油タンク、紙ふうせん、茶筒など、小津的魅力は健在。

このレビューはネタバレを含みます

1948年、田中絹代主演の小津安二郎監督作品。(上映時間は84分) 

戦後まもなくの下町で、貧しいながら服を売ったりしながら幼少の子供と生きる女性(田中絹代)。序盤で、田中絹代が鏡に映った自分の顔をじっと見るシーンがあるが、小津安二郎監督の凝った映像。田中絹代が自分を見つめている重要な場面。 

その後、子供が病気で入院してしまうが、子供の退院時の場面で、看護婦が2階から母子を見送る場面は、田中絹代の母子を「俯瞰」で捉えたショットあり、小津監督としては珍しい人物俯瞰シーンである。その他は、基本的にいつものローアングルである。 

子供の入院費を捻出するために、一晩だけ体を売ってしまう田中絹代だが、その直後に夫(佐野周二)が4年ぶりに復員してくる。その夫に嘘はつけない、隠し事はできないと事実を告げたことから、夫の怒りは収まらない。追求する夫は、田中絹代が体を売った家に行くが、そこでは21歳の女が同様商売をしていた。「こうしないと生きていけないから、嫌だけど仕方ない」という女に、「君の勤め先を見つけてあげるよ」と立ち去る佐野は、友人(笠智衆)に女の勤務先を頼む。 

その笠智衆から「奥さんを許してあげろよ。仕方ないじゃないか」と言われて帰宅するが、妻の顔を見るとやはり同様の振る舞いをしてしまう夫。この時、夫が出ていこうとするのをとめる妻を階段から落としてしまう。
この田中絹代の「階段落ち」は、あの『鎌田行進曲』の階段落ちを凌ぐ迫力ある場面である。田中絹代、体当たりの演技。凄まじい。

そして、夫婦は抱き合うが、夫の背中に回した手を握り締める田中絹代の「手の演技」も見事である。 

終戦直後の風景を捉えた傑作である。
独り言

独り言の感想・評価

1.5

このレビューはネタバレを含みます

そんなに小津作品を見ていないけど、衝動を描くイメージがなかったので意外だった。
結構辛い話。
これは見てるときは地味だしそこまで面白いとは思わないんだけど後でものすごいジワジワ来る映画。幽霊だったのかもしれない、という感動。
夫が戦争に行っている間、急病を患った子どもの入院代に困り一度だけ売春をしてしまう妻。その後帰還し、事実を知った夫との関係を双方の視点から描く。

階段から落ちた後、よろつきながらも一段一段ゆっくり階段を上がり、修一にすがるように謝り倒す時子の姿がすさまじかった。
そういう時代だったのかもしれないが、あそこまでして主人を慕うもんなんだろうか?修一は倒れた時子を心配するような素振りを見せるけど、だったら時子の側に寄って起き上がらせるとかしないんだろうか?さっさと一人で部屋に帰っちゃってさ! とは何回も思った。。笑

修一と抱き合う時子の手が固く結ばれていくカットには感服…!!
これから何があっても夫婦で助け合って生きていくんだ!という強い決意と絆のようなものを感じさせる。

佐野周二さん、ダンディでかっこいいなぁ。
若い頃の笠智衆さんは初めて観たかも。声は変わらないんだなぁ。


◆番外編◆ 軽いネタバレ含む
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時子を許した後、大丈夫か?歩いてみろ。って言われて時子が歩くんだけどフラフラするという流れから、
→ダメじゃないか。これじゃあまた病院代かかっちゃうな!(笑)
という修一のブラックジョークでのENDを一瞬想像したが、無論小津はそんなことはしない。
贖罪、許し、それを受け入れられない羊の懊悩、そして祈り。
田中絹代が佐野周二を抱擁し、その背中の後ろで祈るように両手を握りあわせる様に、これはすごい、とおもった。
えみ

えみの感想・評価

3.5
6年前に親子役だった笠智衆と佐野周二が友人役。田中絹代さんの演技が凄まじくて、本当に辛くなった。
小津映画にもバイオレンスはある「風の中の牝鶏」

小津作品では珍しい肌触り。
ドメスティックバイオレンスどころか田中絹代の階段落ちまであります。小津作品唯一のスタント使用とのこと。
珍しいといえば小津作品でこれほど「階段」が出てくる映画も他にないのでは?醍醐味だらけの小津作品ですがそのひとつに小道具があり、私の解釈が正しければ小津映画で「階段」あまり登場してない気がします。もし違ってたらどなたかご指摘お願いいたします。
ミツヒ

ミツヒの感想・評価

5.0
階段から突き落とされた時子が這う様にして階段を登って行く姿にとても感動した、ラストカットの犬も素晴らしい
戦地からの夫の帰りを健気に待つ雨宮時子(田中絹代)。
ある日息子が病に倒れ入院、お金が必要になった時子は仕方なく身売りをしてしまう。
稼いだお金で息子が元気になった矢先、夫・修一(佐野周二)が戦地から戻ってくる。
歓喜する時子であったが、事の成り行きを修一に話してしまい、そんな時子に修一はショックを隠せなくなる…。



男は弱くバカで愚か、女はそんな男でも愛したが最後、慕い尽くす更に愚かな生き物。
しかしその姿に美しさを感じてしまう俺もまたダメな人間なのかなぁと感じてしまったり。

田中絹代の笑顔が元カノに若干似てるってだけで、心が押しつぶされそうになる男の俺はやっぱナヨナヨしてるぜぃ。
男は弱いんですよ!!


しかしまぁラストのシークエンスといい、フェミニストが観たら憤怒しそうな内容の映画。