オン・ザ・ミルキー・ロードのネタバレレビュー・内容・結末

オン・ザ・ミルキー・ロード2016年製作の映画)

On the Milky Road

上映日:2017年09月15日

製作国:

上映時間:125分

3.8

あらすじ

物語の舞台は、戦時中のとある国。主人公コスタ(エミール・クストリッツァ)は、毎日ロバに乗って銃弾をかわしながら前線の兵士たちにミルクを届けている。コスタは村の人々に慕われ、戦争が終わったら穏やかな将来が待っているように思われたが、ある日、村で一番の英雄・ザガ(プレドラグ・“ミキ”・マノイロヴィッチ)の花嫁になるために現れた謎の美女(モニカ・ベルッチ)と出会い、激しい恋におちる。その女性のある過去…

物語の舞台は、戦時中のとある国。主人公コスタ(エミール・クストリッツァ)は、毎日ロバに乗って銃弾をかわしながら前線の兵士たちにミルクを届けている。コスタは村の人々に慕われ、戦争が終わったら穏やかな将来が待っているように思われたが、ある日、村で一番の英雄・ザガ(プレドラグ・“ミキ”・マノイロヴィッチ)の花嫁になるために現れた謎の美女(モニカ・ベルッチ)と出会い、激しい恋におちる。その女性のある過去によって、村は襲われてしまい、2人の逃避行がはじまります。

「オン・ザ・ミルキー・ロード」に投稿されたネタバレ・内容・結末

オープニングの美しい自然に突然現れた豚の屠殺シーン、血の浴槽であっこれちょっとグロテスクな映画だ…って思ったら案の定でした。
時計台とかの細々した要素はファンタジックで可愛いのに、戦争や焼き打ち、銃が出て来て淡々とみんな死んでゆく…生々しいな~!全体的におもちゃ感のある映画なのに突然リアルでグロテスクな要素が入るのが不思議な感じでした。私的には『ムード・インディゴ』見てた時と同じような感覚を味わったかな あのちょっと酔いそうな感じ
そして映像が文句なしに綺麗 。農村の自然の美しさ、燃え盛る炎、水の中、全ての色が鮮やかで絵画みたいだった。
個人的には「鶴は飛んでいく」がちらっと映ったのでおお!!と思いました そういえば確かにこの映画もロシア映画っぽい鬱屈した雰囲気だったね
グロいし、頭痛くなったけど、見て良かった…笑

3人の敵兵士がずっっっと追っかけてくるのが怖くて苦しくて嫌だった。
喜びや怒り、愛の尊さ、内戦の虚しさや大国の介入のクソさ加減、悲しみに嘆き、人間の愚かさやくだらなさ、ユーモアやバカにするようなギャグ、人知を超えた大いなる力などのいろんな具が、濃厚で猥雑なバルカン音楽の出汁とともにグツグツと煮込まれた、旨味Maxの寄せ鍋のような映画でした。とにかく、過剰です。
生命のエネルギーがほとばしり、整合性などクソくらえって感じで、スウィングしながら突っ走るノリに、今まで気づかなかった心のツボを突かれた気分です。いやースゴかった。

正直、ストーリーは漠然としか覚えておりません。でも、「いいんだよ、細けぇことは!」的なパワーを感じて、チマチマと考えるのを止めて感じながら観た結果、よくわかんないけどメチャクチャ良かったという結論に達しました。

全編通して複雑な空気感だなぁという印象もあります。単色ではなく、様々で相反する感情を感じさせようとしているように思えます。
「その複雑さが人間なんじゃないの」とまるでクストリッツァ監督は映画で語っているような。村の襲撃シーンや花嫁が爆死するシーンですら、悲劇でござい、と描写していないように思ってしまった。人間の複雑さを肯定するような、懐の深さを感じました。
ただ、ラストの石を敷き詰めるシーンだけは、悲しみと祈りのトーンで彩られており、印象的でした。

そして、何よりもモニカ・ベルッチが妖艶すぎて最高です!007の時はいかにも、って感じでしたが、本作ではより自然な官能美を感じました。
魅惑的な眼差しと長く豊かな黒髪がとにかく扇情的で、ほうれい線や手のシワまでもがセクシー。仕草や声も艶っぽく、衝撃的でした。美しい人は年齢関係ない、というかそれぞれの年代の美しさがあるのだな、としみじみ思いました。
えらく強烈な癖のある映画でしたが、もっとも印象に残ったのは、結局モニカ・ベルッチでした。イタリアの宝石という異名は伊達ではないです。
マジック・リアリズム、その先にある現実への祈り。

屠殺されたブタの生き血で水浴びする
ガチョウの群れにハエがたかる。
鏡の前でゼンマイ仕掛けのように飛び跳ね続ける
メンドリがポコポコと卵を産む。
ハヤブサとロバとクマは主人公である監督と友達。
のどかな日常で争っているのは人間だけの
無垢さと愚かさが混然となった
いつものクストリッツァ監督の独創的映画世界。

そこはまたもや花嫁をかっさらう話で持ち切りだ。
銃は祝砲となり、邪悪な権力者を笑うバルカンサウンドが
ようやく休戦を迎えた村をにぎやかにする。
両手に花嫁な監督による、体を張ったスラップスティックな
笑いのシーンも私たちを和ませる。
共に喪った者同士である監督と花嫁が
惹かれあい、寄り添う場面から滲む
人の持つ温かみ。

現実と虚構のはざまで、私たちはいつものように
動物たちと戯れ遊ぶ破天荒な登場人物たちの
ユーモラスな祝祭に加わろうとした瞬間。
大時計は二人の花嫁の手に噛みついて
その時間を停止させてしまう。
現実がじわじわと侵食してきたのだ。

ギリシア神話の悲恋物語のように
焼かれた村から監督と花嫁は逃げ出し
野原と山河をいっさんに駆けていく。
追う兵士の姿は黒子にもISにも見てとれる。
スコープで狙い、祝祭に火を放ち、山の上から監視し
楽園を目指そうとする者達を追い詰める。
無垢な動物さえも殺すのが戦争だ。

これはなんだろう、どうしたことだろう。
いつもの陽気で野蛮で、
ロマンチックなバカ騒ぎはどうなった?
言葉を失う悲痛な場面が続いていく。

今となっては唯一愛だけが意味のあるものだと
必死に逃げる二人を
ヘビとハヤブサとヒツジは何とか助けようとするも
この物語は悲恋の結末を迎えてしまう。

虚構は、現実に敗北してしまうのか。
どうにもならない悲惨な世界の現状が
映画におけるバカ騒ぎさえも影響を及ぼし
やがて焼き尽くしてしまうのか。

生命力に漲った昨日までの祝祭が今日には灰と化す時
荒唐無稽の裏にあったグロテスクな現実に
私たちは深く打ちのめされてしまう。
毎度登場する河に漂う花嫁衣装が
祭りの後に流れ着くのは、果たして目指した楽園なのか?

ヒツジ飼いの老人が、嘆き悲しむ監督を諭す。

「お前が死んだら誰が彼女を思い出すんだ。
愛の記憶を絶やすな」

涙がこぼれた。
唯一愛だけが意味のあるものであり
祝祭が終わっても愛へ続く道を人は進む。
地雷原に石を積み、彼女の記憶と夢見た楽園に泣く監督。

生き延びよう、伝えよう。
監督の祈りがしみじみと伝わった。

現実がそれを嗤い、消そうと企だてても
純真なるものが絶えず続きますように。
昔ばなしの救いのない結末にむかついた子供が
ある日寓話の真意に気づいて涙を流すとき。
陽気な音楽の底に流れる悲痛な叫びを知ったとき。
生きることのネガとポジを受け入れられたとき。
私たちは昨日よりも強く生きていける。
クストリッツァの喜劇。
少しファンタジーが勝ちすぎる印象を受けたのは、CGかもしれない。

お前が死んだら誰が彼女を思い出すんだ!!という羊飼いのセリフ、そしてラストシーンに、震える。
本人の結婚式のような映画だった。
誰かであったのかなぁと思いながら。
待ちに待ったクストリッツァの新作。
いつもの作風にいつもの音楽。時々ハラハラ度々メルヘン。
モニカベルッチみたいなスターが意外と作風にハマってるのが良い驚きでした。
ただ今回は、人がたくさん死んじゃうし、ラストが思いの外重かったので、もっとメルヘンを出してハッピーエンドに仕上げて欲しかったなぁというのが個人的希望です。
アンダーグラウンドのその後の様な作品。
自伝的要素もあるんじゃないかと思うくらい。エミール・クストリッツァから戦争や国は切っても切り離せないんだろうなぁ。

この人の描く悲劇とその中の喜びは、いつも昔々の寓話に包まれて滑稽で残酷で柔らかい。
そして同様に、最後に見せる天国が本当に本当に美しくて悲しい。
この天国を見ると、地獄に近い環境にいる人間ほど信仰が厚くならざるを得ないのがよくわかる。
ファムファタール物として男性が生き残るのは斬新な気がする。
どこか頭のネジが外れているような人達ばかり。罪のない人も動物もあまりに簡単に死んでいくさまはかえって痛快。

その落差で所々にある普遍的な台詞がぐっと来る。(終盤の羊飼い、あれだけ羊を可愛がっていて酷い目にあったというのに主人公に生きろとは!)
クストリッツァの生まれた国の背景からして、彼の映画に「戦争」というキーワードは外せないはず。だからこそ日常的な戦争の中にも、ファンタジーの要素を強くし、きれいな花嫁に派手なパーティー、表情豊かな動物のいるのどかな風景を、暗くすることなく映像にまとめられる人なのだ。しかしクストリッツァという人物を9月にライヴで目の当たりにして、この人は常に戦う道を選んできているのだろうなと思った。戦争を止めることができない世界や人間に対して、映画や音楽という形で戦いを挑み続ける、気骨のある人物である。(2017/10/18 KBCシネマ)
レビューが恐ろしく遅くなっちゃった!いかんいかん。
みんな大好きエミールクストリッツァの最新作「On the milky road」です!いつものクストリッツァらしい騒がしさもありつつ、泣けてしまう大人のラブファンタジーでした。
冒頭から大量のカモがバスタブに飛び込んで豚の血を浴びてハエを食いまくっていたり、表情豊かなロバが人間のように振舞っていたり、音楽好きなハヤブサが肩を交互に揺らして踊ったり、クマにオレンジを餌付けしたり・・・。ヘビが身体に巻き付くシーン以外はCGを使ってないとクストリッツァがパンフレットに書いていましたが、そうとは思えないほどしっかりした役割を持って動物達が生き生きと登場している。この動物達のバカ騒ぎがなんともクストリッツァらしい。もちろんクストリッツァの作品なので音楽も忘れてはいけない。本作では絶大な信頼を寄せいている息子のストリボールが音楽を担当していた。バーで酒を飲んで大騒ぎしながらピアノの上で泥酔した女性がくねくね踊り出す。乱発されるピストルもクストリッツァの映画では楽器の一つでしかない。無茶苦茶にド派手!いつもの感じが楽しくて楽しくて観ている私もお酒が進みます♪♪そんな酒乱騒ぎのあとの可愛いシーンが、洗面器でフィアンセとモニカ・ベルッチのふたりを雨漏りから守るクストリッツァの優しさだ。彼の純朴さに癒されます。そんな優しいクストリッツァに向かってとんでもなく美しいモニカ・ベルッチが牛乳持って走ってくるシーンが堪らん!!50歳超えてあの瑞々しさは何?!豊満な胸もクビレもそのまま!スタイルバッチリやん。今でも全然”現役の女”だった。すごいなぁ・・。そんなモニカ・ベルッチの設定はワケありな超絶ええ女。そして彼女が毎晩観ている映画が「鶴は翔んでゆく」なのです!私が最近ド肝を抜かれたカラトーゾフ監督の1本。モニカ・ベルッチはそれを観て毎晩泣いているんですよ。。めっちゃええ女やん・・・!(本作を観たあと衝動的に家に帰って「鶴は翔んでゆく」を再度観ましたが、何度観ても素晴らしい作品。この映画の感動に慣れることは一生無いでしょう。もう「この映画しか観ずに死ぬまで満足していろ!」と言われても黙って頷けるほど素晴らしい作品でした。改めてこの作品に出会えて本当によかったと心から思いました)
軍に命を狙われ続けている女と親友は動物しかいないような男。人生を諦めかけていたふたりが爆撃音の轟く内戦国で出会い、仮初の恋に燃えて愛の逃避行を実行する。激しくてロマンチックな物語ですね。絵面だけならもっと若いカップルの逃避行の方がもちろんしっくりくるでしょう。ただ、命をかけて愛するような人もいつ出会うかなんてわからない。本当の愛に巡り合わないまま人生も半ばを過ぎたふたりが、やっと巡り会えた生涯の愛に現を抜かしたって良いではないですか。
でもねぇ、後半は切なかった。さっきまで巨大なカボチャを浮き代わりにして川をふわふわ浮いたり、葦の中でどこかの村人が山羊と戦っている様を観て微笑んでいたのに・・そんな幸せも束の間。しつこい軍人の追手からは逃げられない。そして最後は地雷がそこら中に埋まった土地で最愛の彼女は黒い煙になり消えてしまう。二人の隠れ家もキスの最中に崩れながら煙になっていきましたが、煙の描写は美しくも儚くてとても幻想的でした。上手い。逃避行後は前半の騒々しいクストリッツァ調とはかなり異なっていたからか、大きな円を描きながらズームアウトしてゆくラストでは涙が出てくる。。愛する女性を失った男性は神に縋り、彼女の死んだ場所で彼女の愛を何度も反芻しながら彼女を弔う。切ない・・・。鑑賞前「クストリッツァの新作やし♪」と黒ラベルのでかい缶を持ち込んで飲み始めていたのですが、後半は黒ラベルの存在を忘れてハラハラしながら観ていた。これまでのクストリッツァとはだいぶ違った作品のテイスト。でも今のクストリッツァだからこそ撮れた作品ですね。
「自分が監督をして且つ俳優として出るのはしんどいからもうしない」そうですが、これからもオリジナルの映画を撮ってかっこいい音楽を演奏するチャーミングなクストリッツァに私はずっとワクワクさせてもらいます。てかまずは私がセルビアに行かねば!!!
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