スリー・ビルボードの作品情報・感想・評価

スリー・ビルボード2017年製作の映画)

Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

上映日:2018年02月01日

製作国:

上映時間:115分

ジャンル:

4.0

あらすじ

「スリー・ビルボード」に投稿された感想・評価

るる

るるの感想・評価

4.2

このレビューはネタバレを含みます

おばちゃん、気持ちはわかるけどさあ、勘弁してくれよな、おばちゃん…と思ってるうちにドンドン話が重たくなって狂騒が増していく話かと思ったら。思わぬ方向に。

ファッキンクソ田舎物語かと思いきや。ざらついているけど、柔らかい。好感。

差別の描写など、おためごかしでは?美化してるのでは?という気がしないでもなかったけど…西部劇風の音楽に包まれることで、基本的には昔ながらの人情映画なんだと伝わってくるから、音楽のパワーってすごいね…現代の西部劇だと思ったし、現代の田舎の描き方だと思った、アップデート力がすごいね…

随所に妙なおかしみ、滑稽さがあって、重々しく撮ってないぶん、脚本の作為を感じられるつくりで、独特な空気感、面白さがあって…さすがに笑わなかったけど、笑っちゃう人もいるんじゃないかな、ひょっとしてブラックコメディなのか?と思いながら、でも戸惑うことはなく…小さく、くすぐられながら見ることができて、後半にかけて、うまく収斂していって、後味が良い…

あんまり経験したことがない鑑賞体験ができた、という意味で、アカデミー脚本賞もしくは作品賞に相当するのはこっちなのでは、という気がして、
でもまあ、テーマが強烈かつ鮮烈なのは受賞作だったな、文句ないわ、と納得した。技巧的にはこっちだと思うけど。
主演女優賞、この役でか、という気はしないでもないけど、文句ないです、って感じ、フランシス・マクドーマンドはもう一回くらいオスカー貰っても驚かないや。
助演男優賞は素直に良かったね…差別主義者でマザコンでたぶん童貞でクローゼット・ゲイの警官が優しさを手に入れていく、こういう役柄、人物像を演じきったことを称えて、オスカーを贈るのはご時世柄、分かる気がした。

三つの看板と、三人の視点。看板を裏側から見たり、ひっくり返った虫を起こしてやったり、人の表裏を見せる脚本だと思った、巧みだった。

ディクソンが車で三枚目の看板を見つけて、二枚目を確認しにいって、一枚目を見に行く、あの一連のシークエンスの、メリハリを効かせたらコメディ脚本っぽくなりそうな、でもあの独特の間、もたついた感じとか。
あんな道を通るのは道に迷った奴かボンクラだけだ、と言った直後に、テレビカメラの前に立ってるミルドレッドとか。
「俺はガンだ」「知ってるよ」「…え?」「町中の人間が知ってるよ」「知ってて広告を?」と戸惑う感じとか。
歯医者が太った男だったときの、神父が言ってたのはこいつか、と警戒する感じとか。
顔面に吐血してしまって、…わざとじゃない…、わかってる…人を呼んでくるよ、ああ…と絶句してしまう感じとか。
病院で、夫の後頭部を撫でる妻と、妻の腰を撫でる夫の、かわいげとか。
元妻を壁に押し付ける元夫と、父親の首にナイフを突き付ける息子、そこに、トイレ借りていい?と顔を出す、元夫もとい父親のガールフレンド…暴力的な家族に対して、天真爛漫に自分の話をする彼女の異質感とか。
謎のメキシコ人が広告費を出してくれたのよ!とはしゃぐパメラの、ちょっとズレてる感じとか。
二頭の馬に見つめられている…と思ったら急に頭に黒い袋被って、自殺してしまうショックとか。

そこから不穏になっていくのかと思いきや、いや、不穏にはなっていくんだけど、

チキチキータをノリノリで聞いていて、空気が読めない奴と睨まれるディクソン、
トイレで副署長にしがみついて泣くみっともない姿とか。
燃え盛る看板を見つけて、一枚ずつ、消火器を持って消しに走る、あのもたつき具合とか。
声色を変えてスリッパに会話させて自問自答したりとか。
火炎瓶投げつけられてるのに、イヤホンつけっぱなしで署長からのお手紙を読みながら感動したりとか。
国外、砂の多いところだ、と言われてもピンとこない、あの察しの悪さとか。

題材も俳優の演技も、重い、ヒリヒリしてるんだけど、撮り方、演出に、妙な軽さがあって。ラストシーンの後味に繋がっていったと思う。

イカれ女がほんとにイカれてて、でも嫌な感じはしなくて、絶妙だったな。カッコよかった。カラッとしてて、湿っぽくならないように撮ってるのが、ほんと潔い…脚本の力だけじゃないし、俳優の力だけじゃないと思った。
「怖いもの知らずでは?」「そうでもない」
ウィロビーの自殺を知ったとき、警察署からディクソンが転がり出てきたとき、そんなつもりじゃなかった、と言葉を詰まらせる、あの感じ…

ウィロビー署長、ウディ・ハレルソン、ぴったりだなって。嫌な奴に見えて、同情すべき人物で、善人…きっと敬虔なキリスト教徒、自殺は罪の文化圏なんじゃないかな、ものすごい重い事柄のはずなんだけど、手紙はとにかく暖かくて、ユーモアがあって…良い声なんだよな、
後半、妻へ、ミルドレッドへ、ディクソン へ、三通の手紙、ナレーションとは思えない存在感だった、すごいな…

ディクソンがゲイだと気付いてたウィロビー、「今までは不遇だった、だが潮目は変わる、俺にはわかる」…優しい…

ミルドレッド、ウィロビー、ディクソンへと視点が移っていく、ミルドレッドが嘘でしょ、冗談でしょ、shit!な現実、日常を次々と目の当たりにしていくのもすごい…

レッドいいやつだな…顔が可愛い…とか思ってたら、あんな目にあってしまって、病室で相部屋になった包帯男ディクソンとの邂逅はスリラーのように緊張したけど、なんだよそれ…という葛藤、悲しさを感じさせつつ…差し出されたオレンジジュース…ストローの向きを整えてくれる…うなだれた後ろ姿…なんて優しいんだ…

敵ばかりじゃないんだ、と黒人の署長が言ってくれた通り、広告を貼り直してくれる黒人の作業員の彼、職場の黒人の友人、

そして、アリバイに協力してくれて、梯子を支えてくれた、優しいジョージ…切ない…眉を下げたピーター・ディンクレイジの表情が本当に…悲しい…

あの元夫はなんなんだろうな…19歳の彼女と付き合ってる滑稽さを自覚しつつ…でもたぶんきっと、娘くらい歳の離れた若い女の子と付き合うことで心を修復してる部分もあったろうから…ぶん殴るのかと思いきや、彼女の無邪気さを目の当たりにしてワインを贈るミルドレッド、良かったな…

悪人がいない、というと語弊があるけど…行為は悪だけど、ひとの善性を信じたくなるような…でもあの犯人はマジでなんなんだ、怖いというか、厭だったな…元軍人として尊重される立場の人間、ということも示されて、キツかったな…

「警察署をやったのは私」「あんた以外に誰がいる?」なんともざらついている、けれども噴き出してしまった瞬間…「あんまり」「道々考えよう」なんという結論…

shitな日々を懸命に生きているうちに、復讐心がちょっとずつ薄まっていく、もしくは別の何かに、生きる意味に変換されていく、希望ある終わりに見えて、良かったな…全世界のレイピストども、首を洗って待ってろよ!という終わりにも思えたしな…

息子へのケアについて、もうちょっとだけ考えてあげて欲しかったけども。缶を投げつけてきた同級生を、蹴っ飛ばしてくれた母に、「ありがとう」、いや良かったなあ…

差別の描き方がなんとも絶妙だったな。『ゲットアウト』のインパクトには敵わなかったけど。どちらかというと白人同士の差別について、差別は白人の問題なんだ、ということに焦点を絞っていたように思えたけど。

実はゲイのディクソンがホモフォビアを内面化して他に対して差別的に振る舞う描写は、モハヤあるあるなんだけど。
「最近は言い換えが進んでるからな」という黒人署長による皮肉交じりのセリフなど、ああ2016年以降の過渡期を切り取ったハリウッド映画だ…って感じ。

黒人への虐待(この翻訳はどうなんだろう…)が存在することを口にしながら、その様子を見せなかったのは、主題がぶれるから? 見やすくするため? でも、隠していいようなことなのか?とモヤモヤはした。
マイノリティとされる人々が、みんなみんな優しい人として描かれてたあたりも、ちょっと作為を感じてしまったな…

未公開シーンがどれも本編にガッツリ絡むシーンばかりで。
せっかく「寄り目の女」も撮ったんなら登場させてあげてよ、と思った。でもあのシーンも含まれてしまうと、ますます作為的というか、オマエら黒人のことばかり悪く言うけど、白人にもいろいろいるだろ、まずそこに目をむけろよ、という面が強調されすぎてしまうから避けたのかな、とか。邪推。
でもやっぱり、ディクソンが酒場で手品を教わるシーンなど、ああ、本編で手をヒラヒラさせていたのは手品の真似事だったのか、と合点がいってスッキリしたので、カットされたのは残念。

日本語字幕、侮蔑語として「ホモ」と訳したあたりは良かった。
ニガーはニガーでも良かったような気もするけど。
ただ、cuntが「クソアマ」と訳されてたのはマイルドな表現に感じたな…? 女を罵る言葉、腐れま●こ、とかネット用語で散見するしリアルで言うひともいるよね…でもその訳だとさすがにマズイのか、じゃあどんな侮蔑語がニュアンスとして適切か、って考え始めるとキッツイな…こんちくしょうな世の中だな

サントラが良かったので、歌詞の意味がわかったらもっと理解できたのかも。色々考えちゃう映画。
ペジオ

ペジオの感想・評価

4.2
本来なら「犯人を探して決着を着ける」というメインプロット…というか「本筋」であったのだろうか
その「道」では母親は犯人への復讐を通して娘への愛を再確認し、警察は保守的な体質を乗り越え犯人逮捕にこぎつけていたかもしれない

だが誰かが(…具体的には「監督」が)その本筋に「三枚の看板」を建てた

その看板によってふと沸き上がったその場かぎりの感情に登場人物達が「道々考える」ことをせず次々と殉じた結果、サブプロット…「横道」に逸れてしまった物語
主要人物がメインの目的に向かってまっすぐ邁進していれば、起こらなかった出来事だけで構成された物語
それ故に本来ならぶつかる事の無かった人達がぶつかり合い、わかり合える筈の無かった筈の人達がわかり合える

にんげんだもの
脇目も降らず目的に向かって突き進めるのはフィクションの登場人物だけさ
どんなに強い目的や使命感があっても腹は減るし、視界に入ったものに対して何か考えてしまうものだよ人間ならば


マーティン・マクドナーらしい二転三転するプロットがやっぱり好きなのだが、過去二作に比べ(戯曲は未見だが観てえ。)ジャンル要素抑えめで社会問題を所々にまぶしたのがアカデミー受けしたのだろうか
それでも滲み出る「西部劇」感や、ラストの未来の「バディもの」感(この映画はラストありきの映画である)など、あるいは安易に「復讐もの」の展開にならない点からジャンルを定義されることを拒む様な尖った作風はビンビンに感じた
PEACEMAIN

PEACEMAINの感想・評価

4.3

こんな映画観たことないかも。
3枚の看板というワンアイデアから、これほどの人間ドラマを作り上げるとは。
先が読めない。
人の優しさに泣ける。
携帯出てこないね。
何も解決してないけど、最後に「この後2人はどうなったでしょう」という、観客への“問いかけ”で終わってるのも、伏線回収みたいになっててよかった。
別に映画館で観る必要はないけど、とにかく観て感じてほしい。

娘が糞っぽかったから、あまり同情できず。
署長とアビー・コーニッシュの娘たちはかわいい(ロリコンではない)。
nana

nanaの感想・評価

3.8
えげつないほどの人間臭さ
映画というエンタメを通して、相当なリアリティを観ることができた。
その名の通り、3枚の看板が物語を終始見つめる塔になるわけだが、物語のもっと奥深くに眠るストーリーラインが綿密に作り上げれており、作品として観るよりもドラマ、ドキュメンタリーを観ているような感覚に。
映画ならではの演出と、開けたエンディングへの展開には、感慨を覚える。
重いテーマなので、初見の場合は、ワイワイ観る映画でないことを念頭に。
怒りは怒りを来す
ymnnkh

ymnnkhの感想・評価

4.0
始まった瞬間からオモシロ映画の雰囲気がしてた
ある意味田舎ホラー
サスペンスというよりは人間ドラマ
Gensan

Gensanの感想・評価

3.9
面白かった。主人公は、女クリントイーストウッドを思わせる。2転3転のストーリー展開はよかったが、ラストがもやもやだった。

このレビューはネタバレを含みます

久々に、いい映画を見た。今の自分にピッタリだ。
この映画を一言で言うなら、「人間の表層と本質は全く違う」という話だ。
表面的には、娘がレイプされ火をつけられて殺された母親が、9ヶ月経ってもダラダラ操作している警察に苛立ち、田舎の看板広告(3つのビルボード)に、いつになったら捕まえるの?的な言葉を出す、というもの。その効果は大きく、街にトラブルを巻き起こすが、結果犯人は不明のままで終わる。

そこがいい。
前述のように、勧善懲悪の話ではないし、事件そのものや背景がテーマではない。

キーマンは、明らかに署長である。
人望もあり、家族にも優しく、成果も出している警察署長が、その母親には責められ、またガンで周りに迷惑をかけることを危惧して自殺する。
そこで私は号泣したわけだが、その後残した手紙が。特にディクソンへの手紙が全てだった。
ディクソンは差別主義者でキレやすく、マザコンでサボりがちの悉く嫌な警察官として描かれるが、署長は手紙で、お前は素質がある、というのだ。
人に愛をもてば、おまえはきっと立派になる、と。

自分もまさに、こういう署長のようになりたいのだ、ということに気づく。本当に嫌なやつなんていなくて、何か抱えていたり、たださみしかったり、そういうものが悪い表層となって出てくるのであり、そこに人は目を向けない。

ディクソンに、犯人を見つけさせなかったのも良かった。人生、そううまくはいかない。そのおかげで、自分の母から旅立ち、主役の母と意気投合するが、実は殺すということに思いを込めているかといえば、「あんまり」なのだということに、2人だから気づく。
旅路でゆっくり決めればいい、これもいいセリフ。自分のことだってよくわからないけど、考えていこうよ、時間をかけて、と。

小さな「優しさ」が通い合い、やっと人間らしい会話が始まる、そういう、とてもリアルな、地に足のついた映画だった。
大盛り上がりはしないけど、引き込まれた。鑑賞のきっかけを作ってくれた友人に感謝。
のの

ののの感想・評価

3.5
重いテーマが静かに描かれている。いろいろな人物の心情が交差し、白か黒かで決まらない。
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