もうひとりのトムの作品情報・感想・評価

「もうひとりのトム」に投稿された感想・評価

品川巻

品川巻の感想・評価

3.3
卒論でADHDの当事者にインタビューをしていた経験があったので、ほぼテーマありきでこの作品を観ることにした。

メチルフェニデートの処方やADHDの診察の様子など、私でも馴染みのある描写が多かったし、エレベーターのボタンを全部押しちゃうとか授業中に席を立っちゃうとか、息子のADHD症状も分かりやすく表現されていた。

雪景色で母親が息子の耳を押さえて難聴を体験させながら「あなたのことも知りたい」って呟くシーンは凄くいい。
子役の演技やセリフも自然で、ドキュメンタリーを観ているみたいだった...

にもかかわらずそこまでのめり込めなかったのは、息子だけではなく「難聴の母自身にもADHD症状がありそう」なのに、そこにあまりフィーチャーされていなかったからかも。

落ち着きのなさを見ると息子は「多動性」のADHDで、母親の突拍子もない行動は「衝動性」のADHDっぽい。
息子との約束や時間を大切にしようとしている母自身にも実はADHDの特性があることを示唆する描写があった方が「何故こういうことができないんだろう」という正解が見えやすいし、何も知らない観客が「この母親は衝動的でイライラするな〜」という感想で終わらなかった気がする。周囲の環境は難しくても観客だけは母親に寄り添えるようなつくりにしても良かったんじゃないかな。

あと欲を言えば、息子のADHD当事者としての視点からの景色も見せてほしいな〜と母親と同じ気持ちになった。
テッサロニキ映画祭にて。

アメリカで暮らすメキシコ人シングルマザーがADHD(注意欠如・多動症)と診断されてしまった息子を不器用ながら必死に護ろうとする話。

ADHDの治療法の是非と社会福祉の現実、アメリカで暮らすメキシコ人、シングルマザーと貧困、ひとつのドラマにいろいろな現実が入っている。
映画だからというわけではなく、全く同じではないにしろこういう境遇の人がそこそこいるのが現実なんだろう。

社会福祉の援助は出るものの、愛する息子に副作用が出たらどうするのか。
そもそもその説明が無いのも問題なのだけど。
投薬続けたら続けたで副作用の心配あるし、投薬止めたら止めたでまた別の問題が。

これ、母の立場としてはどちらもなかなか辛いものがあるな。
それでもこの母は必死に護ろうとする。完璧な母親ではなく、ダメな姿もけっこう描かれる。それでも息子への愛だけは確実にある。必死にもがき不器用な姿がリアル。

タイトルになっている「もうひとりのトム」なるほどね。
第28回東京国際映画祭で上映された「モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ」の監督ロドリゴ・プラが、ラウラ・サントゥージョと共同でメガホンをとった一本。

ADHDと診断された息子を、必死で守ろうとする母の姿に、心打たれる作品でした。
社会的に弱い立場に立たされる母が障がいを持つ子を育てることは、どんなに愛情があったとしても、いかに厳しいことか、現代社会に問いかけているようでした。
そして一方で、母親の、時に親としての自覚が欠けているような姿や、子どもとの向き合い方に問題があるような姿もリアルに描かれていました。そしてこれは、母もまた人間であり、女であり、完璧ではないといった人間の心理ドラマとしても秀逸であると感じました。

また息子であるトムを演じた、イスラエル・ロドリゲス・ベトレリくんの演技も素晴らしかったです。幼いながらも自分の障がいと取り巻く環境を必死に理解しようとする姿はとても印象的でした。

〈鑑賞者:みゆう〉


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🎥第34回東京国際映画祭
 |開催期間:10/30(土)〜11/8(月)
 |場所:日比谷・有楽町・銀座地区  
 |チケット:当日でも席が空いてる作品は購入できますので是非!

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Naoya

Naoyaの感想・評価

2.7
息子を育てるシングルマザーだったが、日々仕事と両立して、ADHD(注意欠如・多動症)の症状を持つ息子を育てていた。ヒューマンドラマ作。ADHDのリアリティを描きながら、軸にはしっかりと母親と息子の関係性が描かれており、母親のとる行動の意味、そして、息子にとる行動の意味を噛みしめることができる、濃厚なドラマがあります。答えの見つからない、探り難いADHDに対し向き合っていく母親の姿、ADHDがありながら、“息子”として向き合っていく母親の献身さは感慨深い。タイトルも秀逸。この2人の奇妙だが素敵な関係性はいつしか惹かれていきます。
「大丈夫」が確約されていることは何もないけど、多分2人はなんとかやっていける
Tomoboop

Tomoboopの感想・評価

4.0
障害のある子供は自分らしく生きる事が出来るだろうか?「もうひとりのトム」という題名の意味に考えさせられました。
障害に拘らず、本作で描かれる我が子にとって健康的でより良い選択をする難しさは、今コロナ禍での子供にワクチン接種するか否かの議論に繋がる様でとても共感しました。素晴らしい作品!
子役くんの演技も非常に良かったです。あんな複雑な表情が出来るなんて、凄い!
Lenfilm

Lenfilmの感想・評価

1.5
前作?「モンスター〜」って不幸な人が問題に対し愚かな行為をこれでもかと繰り返す、その結果最悪な悲劇を招いてしまう。確かそんなストーリーだったけど…あんま覚えとらん。
今回も同じような状況展開に、この後どんな悲劇、惨劇が起きるんだとハラハラドキドキ!   
結果、期待したような?予想してたような?事は起きませんでした(苦笑

前作見た時も思ったけど、教育の重要性、そしてコミュニケーションの大切さを痛感。 
他人を、社会を、信頼できないと悲劇って生まれやすいんだね。 
まぁ、その前に信頼出来る社会かどうかが問題か。
シングルマザーの母親と息子トムの話

トムは母や周囲を困らせる行動ばかりする
他にも人がいるのにエレベーターのボタンを片っ端から押す姿や、母の会話を邪魔したりといった落ち着きのない行動や、ルールを知りながら無視して周りを困らせる姿が印象的
一方、母親は若くして母になったことや、夫と別れたことで独りで生きていく必要があり、経済的な余裕もなく、困らせる行動ばかりとるトムに対して苛立ちを覚えている
そして、自分ではわからないテクニカルな問題として、息子がADHDと診断され、受け入れざるをえなくなるが、副作用について周囲から言われ、苦悩する

トムが胸に抱えているだろう悩みは、観客である我々は第三者的に俯瞰しているため、想像がつくが、彼のため、自分の生活のために働きづくめで夜に帰ってくる母親からはぼんやりとしかみえない
そのため凄くもどかしい、しかも、それが併発しているADHDに隠される

緩急の少ない話だがとても綺麗なヒューマンドラマだった

精神病や思考の癖は、外部からみえづらいため、言われてみればそうともとれるという症状、兆候から診断される
そのため、病名を受け入れることは難しいし、増えていくしやめられない薬、薬漬けにされるのではないかという病院に対しての不信感は拭えない
同じような経験があるので、共感できたし、9歳の息子に対して、親として判断してあげなければならない彼女の葛藤は大きかっただろうと思う
ものすごいやばい『もうひとりのトム』が出てくるのかと思ったら、そういうことではなかった。

緩急やドラマティックさはなく、ADHDの息子と母親の日常と愛の物語。
何が悪くなるわけでも、何が良くなるわけでもない。
ただこの母子は、これからもこうやっていろいろな壁に当たりながらも、楽しく生きていくんだろうな、という温かいような切ないような気持ちになった。

ADHDという症状による敢えての描き方なのか、トムの本心が常にわからなくて、母と同じ苛立ちを感じた。
怒っているのか、つまらないのか、悲しいのか、楽しいのか…その雰囲気を演じていた男の子もとても良かった。

そうやって、息子はめちゃくちゃいい味出していたのに、母親がなんか…演技素人なのかな…何の感情も見えなくて…それが狙いなのかな…ちょっと理解できなかったけど。
baby

babyの感想・評価

3.8
今年の映画祭、私が最後に鑑賞した
作品がこの作品でよかった。
今回10本参加した中で
雰囲気や空気感は1番好きだった。

この作品の温度はリアルさはもちろん
なんだけどまた一歩違う、
落ち着いていて、静かな沈黙と暖かみが
あって少しぐらぐらしていて、
でも愛はどっしりと構えている感じが
好きだった。
彼女はトムにいつでもフラットに接してて
トムを想っている事は伝わっていた。
トムも彼女もきっと皆んなと一緒。
みんなよりそれが表にでてるだけ。
生きている以上何かに悩ませられるのは
必ずあることだけど、この2人は
悩む対象がお互いで良かったと思う。
そのぐらい素敵な2人だと思ったから。

トムの大嫌いって言葉は怒っているんだ
と言って彼女はハグをする。
もう子供じゃないとトムは言って
私が子供なのと答える。
そんな2人だから過去も、今も、
これからも一緒に生きていける気がした。

その瞬間瞬間の選択が後を返して
間違いだったと思っても、また
進み直せばいい。最後のシーン。
この2人はこの先も大丈夫だと、
なんだか私達がそっと心を
なだめられた気がした。
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