都部さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

4.2

集大成と呼ぶに相応しい佳作。
電光超人グリッドマンを原作とするアニメシリーズ『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』のクロスオーバーは人間同士の共鳴、人間関係の進歩、そして悔恨の払
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.5

シュールレアリスムとの遭遇を思わせる作画により形作られる72分間の明け透けな悪夢のような映像は、支配するものされるものの関係の前者に位置しがちな人間が後者として扱われる奇妙な世界観を淡々と語り続け、そ>>続きを読む

小説の神様 君としか描けない物語(2020年製作の映画)

1.0

決定的な愚作。安直な劇中歌の使い方や色彩やCGIを用いた過剰な演出は軽薄に上滑りするばかりで、泥臭くも物語を紡ごうとする語り部達の台詞やドラマに取り返しのつかない陳腐化を招いている。こんなにも酷い実写>>続きを読む

さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌(1992年製作の映画)

4.4

ジュークボックスミュージカル映画として非常にウェルメイドな本作は、原作者のさくらももこによる情緒的な脚本の妙を十二分に引き出すことに成功しており、後年にも語り継がれる余地を持つ時代性も噛ませたアニメー>>続きを読む

FUNNY BUNNY(2021年製作の映画)

3.5

鑑賞を始めて間もなく観客の大半が感じるのは、香ばしいほどの台詞回しのダサさである。無意味にサブカルネタや喩え話を交えた語りに、不自然なまでに饒舌で気取った語調、そして実在する偉人や創作の名言を恥ずかし>>続きを読む

シベリア超特急(1996年製作の映画)

1.1

私個人がこよなく愛好しているメフィスト賞という名のミステリの小説大賞が世の中にはあり、その受賞作はどれも奇想な構成や真相を持った一風変わったミステリなのだが、本作もまたそれらの作品に類するような"バカ>>続きを読む

サザエさん(1956年製作の映画)

3.2

人気歌手江利チエミを主人公である磯野サザエに迎えた本作は、お馴染みの家庭内喜劇を展開しながらも長編映画の緩急としてミュージカル要素を兼ね備えており、その多くが妄想の中で展開されるものであるから表現力豊>>続きを読む

あさがおと加瀬さん。(2017年製作の映画)

3.0

漫画から短編映画を作るにあたり時として危惧されるのは尺に応じる形での内容の単純化であるが、本作は原作の3つのエピソードを題材として作品の中で三幕構成の形を取っており、二人の関係性のエモーショナルな部分>>続きを読む

トリノコシティ(2017年製作の映画)

2.1

ボーカロイドの楽曲の実写化という頓珍漢な企画の割には、小中学生向けのSFファンタジー映画として可もなく不可もなくな仕上がりを得ており、予算に応じた物語と展開はきわめて潔い作りで好感が持てる。

『あな
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プリズナーズ・オブ・ゴーストランド(2021年製作の映画)

1.0

園子温監督のハリウッドデビューという文言だけで押し通すにはあまりにも無理がある映画で、本人の作品内でさえ一歩間違えると激しい陳腐化を招く園作品の演技傾向や演出、それらの灰汁だけを取り上げるような外様脚>>続きを読む

映画 刀剣乱舞-継承-(2019年製作の映画)

3.7

刀剣乱舞に関する知識は気付くと自害を図るへし切長谷部くらいしかなかったのですが、どうやらその知識すら虚実と分かり戦々恐々でしたが、実写映画として新規層にも設定と物語の妙が呑み込みやすい語りに既存の審神>>続きを読む

ルパン三世 VS キャッツ・アイ(2023年製作の映画)

1.6

令和の世に二大の作品を再定義する斬新な切り口も懐古趣味に媚びることで期待に応えることも出来ているとは言い難い本作は、80年代を舞台とすることでクロスオーバー作品の整合性をかろうじて取っているが、泥棒V>>続きを読む

メタルマン(2008年製作の映画)

1.3

そこまでだ、残念だったな──私が映画鑑賞に傾倒した契機である動画投稿者の持ちネタとしてよく用いられたのが本作の『メタルマン』であり、そんな思い出深い作品をようやく手元に置くことが出来たのは感無量と言え>>続きを読む

フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

4.4

野球という普遍的な球技を題材として、個人/故人の人生に残された悔恨を解消する優しき作劇として上等のそれで、野球好きの父親との断絶を心残りとする語り部の人生をも救い取る結末は至極の一言である。

かつて
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尻怪獣アスラ(2004年製作の映画)

4.5

贔屓目抜きに滅茶苦茶面白かった。『モスラ』の小美人のオマージュ歌唱から始まる本作は尻怪獣アスラというある種の出オチネタに決して依存しない秀逸な作りで、観客の興味関心を掴んで離さない奇想天外な進行と狂人>>続きを読む

ドラゴンボール EVOLUTION(2009年製作の映画)

1.7

近年 監督本人も映画史に残る失敗作と認め公式の場で謝罪が成された本作。鳥山明による大ヒット漫画『ドラゴンボール』の実写化とは名ばかりのとびきりZENKAIパワーな奇想な作品なのは事実ですが、ツッコミど>>続きを読む

紙ひこうき(2012年製作の映画)

3.2

白黒(モノクロ)により統一された世界観に唯一の色が差す──それが希望や未来の暗喩として機能している構図は今どき安易にも程があるように思いますが、紙飛行機という小道具を軸とした男女の出会いの難易さの表現>>続きを読む

あの頃をもう一度(2021年製作の映画)

4.6

これは本当に素晴らしい短編映画だと思いますよ……、台詞のないサイレント映画にも関わらず老夫婦の内なる声がその表情とダンスから十全に伝わってくるのは勿論のこと、人生における喜びを全身で表現するような躍動>>続きを読む

くまのプーさん(2011年製作の映画)

3.5

子供の頃。あれは12歳ですかね、通っていたスイミングスクールのイベントでディズニーランドに行ったんですが、当時の私は怖がりで泣き虫だったのでプーさんのハニーハントでガチ泣きして帰宅を強請ったという逸話>>続きを読む

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)

3.3

童心を謳歌した幼少期に好んでいた存在と酸いも甘いも知った大人になってから再会することで、改めて自分の人生を見直し童心を再獲得するというプロットは原作者A・A・ミルトンによる原作の潮流からやや逸脱したも>>続きを読む

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)

4.5

最近のディズニー映画の中では随一の完成度だと思います。いわゆる毒親とその庇護下に晒される娘の距離関係における問題をコメディ調の物語と共に適切に提示しながら、それを踏まえて年相応の自分らしさに対する渇望>>続きを読む

マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル(2022年製作の映画)

3.7

MCU世界にも存在していたケヴィン・ベーコンの誘拐という暴力的なユーモアが溢れる切り口から、マンティスとピーターの姉弟関係を初めとしてガーディアンズ組のそれぞれの家族愛に優しく帰結する45分の物語は、>>続きを読む

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(2001年製作の映画)

4.0

ウェス・アンダーソン作品を好ましく思っているのですが、中でも自分の好みの上澄みにあるのが本作。離散した歪な家族がそれぞれ散文的な物語を果たしながら、支離滅裂とすら思える道程を経て、物語の結末に集約され>>続きを読む

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界(2022年製作の映画)

2.9

可もなく不可もなくの物語というのが率直な感想で、息子の同性愛やマッチョイズムの緩やかな肯定/否定は事更に取り上げられる事がないのでさして気にならないものの、魅力に乏しい世界観と物語構造は二時間映画の主>>続きを読む

ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)

3.1

本作は東南アジア伝統文化の影響を元に形作られた作品で、異なる文化圏の人間に対する不信から来る分断の危険性とその境界を融和に導く普遍的な信頼の重要性を軸に据えながら、殺伐百合ったり異種百合ったりとその構>>続きを読む

ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作の映画)

3.5

The カルト映画と知られる本作は、現代的な価値観に則っていえば『ロック調のクィアミュージカル映画』とカテゴライズすることが可能ですが、公開当初の1970年代後半にそれをするのは土台無理な話でしょう。>>続きを読む

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)(2023年製作の映画)

3.6

ドラえもん映画の全ての過去作の履修を終えた私は最新作を見るべく劇場に足を運んだ──理想郷伝説の存在の真偽を巡る飛空譚から始まる物語はドラ映画ならではの浪漫の確保に成功しており、旧型の時空飛行艇タイムツ>>続きを読む

マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ウェアウルフ・バイ・ナイト(2022年製作の映画)

2.5

作品としての面白さは致命的に欠けているという点は否めないが、『ブレイド』を始めとする闇の世界の住人をMCUに登場させる為の土台作りも兼ねた短編と考えると企画としての意図は呑み込める。

古典的恐怖映画
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レイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981年製作の映画)

3.4

言わずと知れた名作シリーズの第1作であり、"文化的・歴史的・芸術的に高い価値を持つ映画"のみに登録を許されるアメリカ国立フィルム登録簿に選ばれた作品です。後々の活劇映画の風潮への影響も大きく、著名な劇>>続きを読む

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)

3.7

作品を通した結論の自己啓発的な無難な落とし所は正直どうかと思うが、作品それ自体の味わいは感覚的な筆致であるから、たしかに心に波紋を引き起こすもので、夢敗れた大人が改めて他者を通して自分の人生の価値を再>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

1.7

本作を語る前提としてスティーヴン・スピルバーグ監督作の一作として本作は一般水準程度の完成度は確保されており、まず間違いなく世間評として酷評されるほどの作品ではないのだが、私個人の好みとして半自伝的な物>>続きを読む

秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II 〜私を愛した黒烏龍茶〜(2008年製作の映画)

4.2

インターネットに潜行して株式を制する形で日本という国を商品として売り捌くという次代を感じるMr.Aの野望に対する秘密結社鷹の爪団のマッチアップが描かれる本作。島根Disと島根賛歌を繰り返しながら『とも>>続きを読む

ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦(2022年製作の映画)

3.3

本作は迫力大で何より雄弁な火山映像を主としながらも、ドキュメンタリーとしては物静かな作りだ──睡眠導入音声のような静謐な語りと共に語られるクラフト夫妻の研究の日々は興味深いものの、正直鑑賞中はかなり眠>>続きを読む

STAND BY ME ドラえもん2(2020年製作の映画)

1.3

前作が酷評を受けて然るべき作品完成度だったので身構えていたのだが、脚本や構成の成立の為に時代錯誤感を感じる台詞を口にして歪な役回りを演じる人物達の挙動は変わらず、本作で加えられる原作を踏襲した改編要素>>続きを読む

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑(2020年製作の映画)

2.5

本作の命題は『商業主義批判を兼ねた自分らしさの追求』『等身大の自分と身を置く環境を受容する』ことにあるが、前作の映画としての独自性を捨てて本作で安っぽいハートウォーミング路線に走った姿勢はまさに作中で>>続きを読む

STAND BY ME ドラえもん(2014年製作の映画)

1.6

本作は長らくアニメシリーズを続けてきた『ドラえもん』をCGアニメ化するという意欲的な姿勢が発揮されてるにも関わらず、原作の魅力を伝える為に現代劇として再構成する努力を有り得ないほどに怠っている印象で、>>続きを読む