エッセイ風レビュー
『火垂るの墓』──無知という名の孤独と、死者のまなざし
何度見ても涙がこぼれる。
それは物語の悲しさゆえではない。
むしろ、悲しみの奥に潜む「どうしようもなさ」が、観る者の心…
子どもの頃に何度か視聴。今回30年ぶりくらいに観た。
戦争体験のない自分にはどこか他人事になってしまいがちな戦争。でも主人公の清太や節子を見ていると辛くなって他人事ではなくなるのがこの作品のすごさ。…
高畑勲監督は本作が「反戦映画」と呼ばれることを繰り返し否定してきた。
高畑監督が描きたかったものは「生と死」の美徳だったのでと思った。
本作では直接的な戦火の被害だけでなく、戦争が日常生活や人々の…
© 野坂昭如/新潮社, 1988