マザー、サンの作品情報・感想・評価

マザー、サン1997年製作の映画)

MOTHER AND SON

製作国:

上映時間:73分

ジャンル:

3.9

「マザー、サン」に投稿された感想・評価

shaw

shawの感想・評価

3.6
 正直に白状します。開始10分ほどで寝そうになりました。予想はしていた。

 全編ワンカットの「エルミタージュ幻想」を見て、眠くはなったけれど、ワンカット映像なのだから瞬きすら惜しいと、寝てはいけないと耐え抜いた末、その美しさに心を奪われました。

 そしてとりあえず彼の作品でブルーレイ化されたものを買い占めました。しばらく手をつけていませんでしたが、ソクーロフ作品二つめとしてこれを鑑賞したわけです。

 これを是非ともBGM(バック・グラウンド・"ムービー")に推薦したい。

 本作のブルーレイは4000円もしましたが、なぜか後悔はあまりしていない。恐らく全ての映像が絵画そのままのように映え映えの映えだったからです(語彙力)。パソコンの背景にしたいくらいです。

 不思議な映画体験でした(これを見る前に「ベイツ・モーテル」を見ていたので、こういう母と子の関係性を見ててなんだか変な気分になりました笑)。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.5
「マザー、サン」

〜最初に一言、森と海と汽車と一軒家。絵画との境を目指した画作りで、そっと喪失感を描いたソクーロフの美の頂点ここに極まりし〜

冒頭、時代も場所もわからない暗い森。そこには一軒家がある。死にゆく母と看病する息子、最期の時間を過ごす。広大な草原、深い森、険しい山、散歩、そして母の臨終の時。今、様々な風景の中に喪失の瞬間を描く…本作はソクーロフが1997年に露、独で映画化した絵画的な画面と緻密に構成された音響が独創的な美学に押し上げた芸術映画で、この度国内初BD化され高画質の映像美で鑑賞したが最高傑作である。

この作品は監督による"近親"をめぐる3部作の第1弾で、ここでは母と息子にフォーカスし、権力者を取り上げる4部作とは対照的に時代も場所も特定することが困難な風景の中で、美しくも儚い情景を描き出す。その映像の中から汲み取れるものは濃密な2人の気持ちの交流と2人の内面のドラマである。

この映画はいわゆる病におかされている母を息子が介護する最後の1日だけを描いている作品だが、特に他の登場人物が出てこない分、まるでこの地球上にいるのはその2人だけかのような見方ができる。そういった点では、ソクーロフ美学の集大成とも言えるのかもしれない。とりわけ色使いや脱色などの手法を取り入れている点はすごく評価できるし、色素を残すことで風変わりな映像に高めているのも見ているこっちとしては面白い。



さて、物語は非常にシンプルな話である。父親の存在を明かにせず、2人の経歴から職業、どういったものが好きなのか等が一切描かれずに、ただ病に倒れる母親を一生懸命看病する息子との愛の物語を物静かな自然の中で孤独感を持つばかりの風景とともに織り成す1本である。


本作は冒頭から非常に魅力的である。街の窓音の音が暗闇の中鳴り響く。そして音楽が流れ、画面は病気の母を看病する息子との2人のショットが写し出される。息子は夢を見たよと語り始める。彼の表情は少しにこやかになる。そして母も口を開き話かけ始める(ここでは神についての話がされる)。そして息子は母の髪を櫛でとき、立ち上がる。どうやら母と息子は同じ夢を見ていたようだ。画面が切り変わり、美しい森の中に立ち並ぶ木々のショット、汽車の汽笛の音が聞こえる中、新たなカットに変わり、そこは一面緑の原風景がフレームインされる。(絵画のようなタッチで写し出される幻想的で美しい映像演出)。

続いて、息子が自然の中に立っている姿を捉え、両腕にバケツを持った彼が一軒家の中へと入っていく。そして母に食事か散歩どちらを先にするかと尋ねる。母親はゆったりと苦しそうな息遣いで散歩がしたいと息子に頼む。カットは変わり森の中の風景が写し出される。そしてカメラはゆったりと森から2人の姿へを捉え、ベンチに母親を横たわらせる(それを長回しする)。

続いて、息子は家にある葉書や写真が入ったアルバムを取ってこようとする。そして母に読んで聞かせる。ところが急に母が苦しみはじめ、息子は動揺しつつ母を落ち着かせる。草原の中の小道をしばらく2人は歩き(母親を息子が抱きかかえている状態)、斜面のくぼみに母をおろす。息子が母を見守り、やがて目をそらす。そして母親は何か話してと言う。彼は子供の頃の母の思い出を話す。

続いて、再び息子は母を両腕に抱え、山の中の森の家に戻る。そしてストローボトルに入ったジュースを母に飲ませ、息子は母の様子に愕然としながら見守る。そして彼は母を抱えて家に入り、ベッドに寝かせ毛布をかける。そして母は死ぬのが怖いと息子にもらし、息子が死ぬ理由等は無いなど色々と優しい言葉をかける。

そして物語は佳境へと向かう…と簡単に説明するとこんな感じで非常に映像が綺麗な作風だ。


この作品はソクーロフの最高傑作と言っても過言ではないほど映像美が美しく、たったの71分間と言う尺の短い上映時間の中に凝縮された市場あふれる物語には感銘を受ける。この映画50分頃ぐらいからほぼセリフがなくなり、息子の描写をとらえるカット割が何度か起こる。それは固定カメラで長回しされ、また上空撮影され森全体を通したり、風や鳥の囀り汽笛の音を強調させる。そうした中、木漏れ日が美しく光輝く森の中での息子の1人の姿のショットが美しく印象的だ。

ところでこの作品を見てロマン派の風景画家らを頭の中で思い浮かべたのは私だけだろうか…。こういったピクチャレスクな風景を寄せ集めた作風は中々無くてすごく新鮮である。それに自然主義というか大自然や海なども垣間見れる、よりどりみどりの映像群が返って非現実的に感じるが、個人的には好む。

それはそうと、この作品の息子役の役者は今でもビジネスマンとして活躍を続けている人物で、職業俳優になることを拒んでいる事は知っていたのだが、ソクーロフ映画史上最も私が高評価をつけている「日陽はしずかに発酵し…」の主人公役である。彼の芝居はやはり非常にうまい。基本的にソクーロフの作品の中には素人役者が多く出演するが、やはりいちど使って切り捨てと言うスタイルは個人的には好む作風として。だからブレッソンの作品等は多くの"モデル"とされる役者が一作品ごとに変わるのでリアリティもますし真新しく新鮮な作風になる。

この作品に出ているその彼も前作の作品の風貌と変わっている分、最初はわからなかったが、キャストの名前を見ると同一人物であることに気づいた。ここまで風貌が変われば同じ役者を使ってもいいと思う。また母親役のガイアーもどうやら映画関係者の人であるようだが他に出演している記録がないみたいだ。彼女の芝居も良かった。

それにしてもソクーロフの考える近親っていうのはどういうものなのだろうか。この作品ではどこからどう見ても母子が同一化を求めているような演出があるし、ドラマ性がそもそもそういう展開へと流れていく。後に撮った「ファザー、サン」もそうだが、行き過ぎた親密を観客にどう捉えるかを試しているかのように感じる。それにしたってVHSはあるようだが、ほとんど出回ってないし廃盤でプレミア価格でなかなか手が出せないのだが、彼の1990年から93年の間の3年間に撮っているこちらのタイトルの作品を非常に見たくてたまらないのだ。「セカンド・サークル」「ストーン/クリミアの亡霊」「静かなる一頁」…これらを見ないとソクーロフの作品をトータル的に評価できない今のところ。短編やドキュメンタリーを除けばこれらを見れば長編作品は全て制覇できる。

本作は何も起こらない退屈さがあるが、これが賛否両論のところだろう。だが、芸術的な要素が好きな方には、はまれるのかもしれない。

余談だが、この近親3部作の第3作目とされている"2人の兄弟と妹"と言う作品で完結すると予告されているのに未だにソクーロフはこの作品を仕上げていないよな。彼のフィルモグラフィー見る限りそのタイトルは無い。
距離と時間を歪め画面にピン留めさせる試み。精神状態によってはかなり退屈
映画と芸術の曖昧な境界線が心地よい
レンズを絵具で加工して撮影された映像に
美しい衝撃を受けました
絵画的ではなく半分絵画な映像体験
物語よりソクーロフの芸術性を楽しむ作品
素晴らしいです♪
liverbird

liverbirdの感想・評価

4.0
ものすごくシンプルな話、しかしこれが独特のリズムと見せ方、語らなさで映画になってしまう!すごいなあ
たむ

たむの感想・評価

4.0
映像の美しさや扱われているテーマの普遍性、喪失を描いた映画は、観客に非常に近い親近感を与え、カタルシスを与えます。
この映画は、映画の中で何も描かれないように見えるからこそ、観客は能動的に作品に参加する事が必要です。
少し歪んだ、ソクーロフ監督しか撮れない映像が、失われていく命からの世界の見え方のように思えました。
ソクーロフ至高のアンビエントフィルム。

死期というか、もう向こういってもうてるわけだが、車体の見えない白煙と望遠越しの帆船が如何ともしがたい。
非自然の時間 海を感じる音
蒸気機関車が森に消えて
建物の内と外の意識 暖炉の薪の音 
ソクーロフの雷鳴 光を覆う雲
母の記憶 息子の夢 死が訪れる
微かな変化が生命を伝える
海を往く帆船 指にとまる蝶
静かな時間が流れる
漆

漆の感想・評価

4.0
京都みなみ会館の旧館で最後に観たのが父と娘だけの黙示録『ニーチェの馬』だった。新館で最初に観たこの映画は母と息子だけの創世記のように思えた。
Ryotal

Ryotalの感想・評価

4.5
母親と息子。息子が赤ちゃんの頃は、母親に抱かれ、寄り添って寝かしつけられ、哺乳瓶でミルクを与えられる。そして、母親が病気になったり、晩年になると、今度は息子が母親を抱き上げ、寄り添って眠りを見守り、吸い飲みで水を与える。山を登ったら降りるように、世話をし、そして世話をされる。後半、息子が一人で山に登っていくシーンは、『エレファント』同様に、ゆっくりと考え、消化する時間を与えられる。マザー・サンの〈サン〉を太陽だと思っていたが、息子のことだった。木漏れ日や印象的な太陽のシーンが多いことからも、抽象的な意味での母親と考えるのも、あながち間違いではない。
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