ろく

ビューティフル・マインドのろくのレビュー・感想・評価

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
3.8
数学は好きですか?②

僕らは「有限」で「具象」な、すなわち「今ここにある世界」に住んでいる。でも数学者は違うんだ。「無限」で「抽象」な「概念だけで構成する世界」に生きているんだ。

それはある意味宗教家や神秘哲学者と同じなのかもしれない。全ての共通するのは「今/ここ」がぐらぐらと崩れ落ちてしまうだろうという感覚だ。主役のラッセル・クロウもそこが揺らぐ。揺らいだ先は?そこにあるのは「自分の中にだけある世界かもしれない」。精神は𢌞る。地面はひっくり返る。

でもね、この映画がそれでも「感動的」なのは「その揺らぎ」を「揺らぎ」として最後受け止めるラッセル・クロウの姿なんだ。禅は悟りを開くことだけが目的でない。悟りを開いた後で「悟った全て」を捨てて、今ままでと同じ行動をすること、それが禅なんだ。求道的な禅寺の修業僧と主役のラッセル・クロウをかぶらせるのはいささか性急的かもしれないけど、それでも僕はそう思ってしまう。

数学の話。森先生の数学の本なんか大好きだけど、僕が一番好きなのは「彼ら」のエピソードだ。すなわち、いつも紙とペンしか持っていなかったり、部屋はもう数式が書かれた紙でぐちゃぐちゃだったり、車の運転中に助手席から曇ったフロントガラスに数式を書きだしたり。僕らとは「見ている世界」が違うと思う。だから彼らは(彼らにとっては大変だが)美しい。さながらアスリートのように求道的にそれに立ち向かう。まるでドン・キホーテだけど僕らは笑えるだろうか。そこにある姿は「僕らがついていけなくて捨ててしまった」ものを追い求める美しい姿だ。だからこの映画は美しいのかもしれない。題名にも臆面もなく書いているじゃないか。「ビューティフル・マインド」ってね。

※「授業なんか受けるのは想像性がなくなるだけだ」納得。世の中授業を受けるだけで成績が上がると信じている親/子が多すぎる。予備校の授業受けたからって成績は伸びないからな。いやこれは自分の授業もそう思ってますよ。

※本日の問題 正多面体が20面体以上ないことを頂点の観点から説明せよ。また一つの面が正五角形(正12面体)以上の面がないことも同様に説明せよ。
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