【第60回カンヌ映画祭 監督賞】
『永遠の門 ゴッホの見た未来』ジュリアン・シュナーベル監督が、ベストセラーとなった元『ELLE』編集長であるジャン=ドミニク・ボビーの回顧録を映画化した作品。カンヌ映画祭で監督賞を受賞、アカデミー賞でも監督賞など全4部門でノミネートされた。
『永遠の門』が人生ベスト級に好きなのだが、本作も期待通りの作品になっていた。シュナーベルは実話ものを美しく仕上げるのが上手い。
オシャレに疎い僕には『ELLE』元編集長の権威がどれほどなのかは分からないが、彼自身の感性とシュナーベル監督ならではの映像表現がマッチしているように感じられた。
主観と目の動き、客観的なカメラなど様々な手法で撮られた美しい撮影がとてもいい。マチュー・アマルリックの目の演技も素晴らしい。
テレンス・マリック『ツリー・オブ・ライフ』をなんとなく連想した。自分の人生を振り返る中で見つめる有限だからこそ美しい人生の悦び。そんなことを想起させる作品だった。
あの手法で書かれた回顧録、どれほどの忍耐と手間がかかっているのだろう。ボビーはもちろん、出版を手伝った全ての人に感謝したいと思わせられる。
人生の儚さ、そしてその中で輝く光を詩的な表現で綴った秀作。『永遠の門』ほどではないがなかなか好きな作品だった。