夜の第三部分の作品情報・感想・評価

「夜の第三部分」に投稿された感想・評価

"第四の天使がラッパを吹くと、太陽の三分の一と月の三分の一と星の三分の一が壊されて、昼はその三分の一が明かりを失い、夜も闇を暗くした。"

ヨハネの黙示録の朗読から始まる。タイトルはこの三分の一の闇という意味なのだろう。
限りなくモノクロームに近いカラー映像の中で血の赤色や子供のコートの緑色などがきわ立つ。亡き妻に生き写しの女性との出会いは『惑星ソラリス』を連想させたけれども、レムの原作からインスピレーションを得たのだろうか(脚本は父親との共作)。両作品の女性の顔も雰囲気も似ている。

ズラウスキー特有のエキセントリックでヒステリックな騒々しさは、その萌芽はあるにしても影を潜め比較的淡々と物語は進む。シラミに血を吸わせてチフスのワクチンを作る描写はなかなか強烈で震え上がるが、これは当時実際に行われていたことらしい。
このまま静かに幕切れかと思いきや、終盤一気に狂気が炸裂する怒涛のラストシークエンスには心拍数マックス。あぁやはり彼は狂気を描く監督なのだなと思った。

画面に釘付けの95分。どんよりと垂れ込めた曇り空のような世界が病みつきになる。ようやくズラウスキーと仲良くなれた気持ち。
SexyPonyo

SexyPonyoの感想・評価

4.0
ズラウスキーのデビュー作。まだ広角レンズとか絶叫演技はないのね。でも唐突なバイオレンス描写はこの頃から。シラミのアップがキモい。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

3.5
‪「夜の第三部分」‬
‪A.ズラウスキーの本作は72年製作の日本公開は95年…初見したが不条理すぎる。これがナチスドイツによって占領されたポーランドなのか…目に焼き付く強烈な描写で迫る…妻子を殺された男の物語だがあのシラミのシーンは気色悪いの一言。狂気と官能を描いて来た彼の渾身の力作だと思う‬。
Ichi

Ichiの感想・評価

5.0
ズラウスキーの映画を見ていると私の脳がドロドロと歓喜の声をあげます。

永遠とループしていく終わりなきカフカ的な悪夢。血を吸いあげていく大量のシラミに当時の混沌が象徴されているのです。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.5
【業界初!シラミの解剖大解明!】
ポーランドの鬼才アンジェイ・ズラウスキー ブルーレイBOXに彼の長編デビュー作『夜の第三部分』が収録されていたので観てみた。アンジェイ・ワイダの『世代』に衝撃を受けて、映画監督を志したズラウスキーがワイダの助監督をする中で修行を行い、初めて作った作品がこれだ。ズラウスキーの父が書いた、自伝的小説を映画化したとのことだが果たして...

☆『夜の第三部分』あらすじ
家族がナチスに殺された。なんとか逃げ切った男は、街中で殺された妻の面影を宿した女性の出産に立ち会う。極限状態で彼らは惹かれ合う。彼はその女性と彼女の赤ちゃんを守るためにチフス研究所で働くことになり...

☆リアリズムがファンタジーの門を開く
アーティストは、デビュー作に自分の全てを投影させるといわれるが、ズラウスキーも例に漏れず自分の中に在るもの全てを本作にぶつけていた。作家一族に生まれたズラウスキーは、文学という文字から解き放たれるファンタジーに、インスピレーションを掻き立てられたのだろうか、デビュー作から混沌の寓話を作り出していた。

いきなり、ナチスに妻を殺されるシーンから始まる。目をかっぴらき血だらけになった妻が歩くシーンでギョッとする。そして、そのまま男の逃走シーンへ。これがメチャクチャ怖い。逃げ場のない街中を、男が逃げる。物陰に隠れ、そっと階段の方を観ると、ナチスが無慈悲に人を殺して殺して殺しまくる。行こうかと思うと、その先から血だらけの人がバタッと倒れてくる。

ズラウスキーは1940年生まれ。物心が着く頃には戦争は終わっていた。狂気の戦争の生々しさは父や大叔父等から伝聞でしか聞かされていなかったと思われる。しかしながら、ズラウスキーは徹底して悪夢の戦場を再現しようとした。荒涼とする街中、ほとんどナチスの顔を映さぬことで強調される不気味さ。これらは、フィックスのカメラでは表現できない。『シルバー・グローブ』同様、常に爆速で動き回るカメラによって、観客もろとも地獄の底へと引きずり込むのだ。

そしてズラウスキーはこの頃から既に、行きすぎたリアリズムによって開かれるファンタジーという作風を身につけていた。地獄を彷徨う男は、戦場で女の出産に立ち会う。敵に殺されるかもしれない。しかも、自分は医者でもなんでもない。そういう極限状態の中、女の瞳に殺された妻の残像を見出し、不器用ながらも手伝うことにする。そして、女を助けるとそのまま恋愛感情を抱き始める。彼女を守らねば!と。逃亡生活をする中、チフス研究所でシラミに血を吸わせる仕事に着く。

顕微鏡でシラミを拡大し、機械的に血を喰わせていくみたことも無い絵面、そして研究と称し、シラミを次々と真っ二つにしていく様子の気持ち悪さに度肝を抜かれる。

悪夢のようなシーンの連続で、観客を混沌の渦に放り込んだままラストまで駆け抜ける。これは現実なのか虚構なのかわからなくなっていく所にズラウスキーの才能がギラギラ光る。

観終わった後、あれはなんだったのだろうと考えてみた。恐らく、守る者の為に人はどこまでも残酷になれるという心理状況を100分ノンストップで描いた作品なんだろう。ナチスが無残に一般人を殺す、無残に。そこから逃げる男も、妻と子どもを守る為に機械的にシラミを苛め、無残に殺していく。人の残虐性が円環構造となっていたのだ。

ズラウスキー、意外と好きかもしれないと思ったブンブンでした。
ロラン

ロランの感想・評価

2.5
初めて観た時は序盤の怒涛の展開から引き込まれたけど、こうして再見すると大部分は弛緩しているし、映像も荒いだけで平板。

とにかく編集のギミックに頼りきった映画で、カットが変わる度に主人公の服装が変わったり、一人の女へのオブセッションの物語というのも『去年マリエンバートで』を想起させる。ただ本作は、大部分が主人公の脳内で起こっている妄想の一言で説明できてしまうし、ラストもすべては主人公の見た夢だったと言わんばかりに冒頭に円環するので身も蓋もない。

画面奥の暗闇に殺された妻子が現れる演出も、これ見よがしに反復すれば、ひとつのアイデアを延々と見せられているようで驚きがない。ただ、主人公が覗き込んだ床穴の下で老婆がこちらを向いて横たわっているショットは不気味すぎて忘れられない。

ナチス占領下のポーランドが舞台なので、戦火の荒廃した街並みは映画の空気感に貢献している。劇伴も不穏さを煽っていた。クライマックスの病院内の場面はまさしく不条理で、まるで牢獄のように監禁された全裸の人々は脳裏に焼きついている。
チフス菌実験のためにシラミ培養の仕事に就く男の見る夢とうつつの錯綜体。時空間が乱接続していくところや事件の発端と結末が見えず宙吊り状態であるところはまさに悪夢そのもの
こういう明確に不条理な話も、嫌いじゃないけど、結構早い段階で、もう条理がないから不条理もないみたいなところまでいっちゃってたのかもしれないね。
意識朦朧というか、意志がはっきりしない人たちがすでにいっぱいいっぱいいるもんね。

出産のとこは衝撃だったけど、シラミがプキューッと膨れるとことか、嫌いじゃない。てか好き。
むしろ上質の不条理映画として愉しめた!そう、いつものテンポのよさがいきとる!
なんだこれは、、結局シラミか、、!?と思いましたがズラウスキー監督に興味をもった一作でした。なによりもポーランドの方は皆美しかった。ドッペルゲンガーの設定は非常に理解し難かったですが、結末へと向かうスピード感、絶望感は凄まじかったように思います。
2014.12.25 シアターイメージフォーラム(ポーランド映画祭2014)