鉄路の男の作品情報・感想・評価

鉄路の男1957年製作の映画)

CZLOWIEK NA TORZE

製作国:

上映時間:89分

4.2

「鉄路の男」に投稿された感想・評価

moku

mokuの感想・評価

4.0
不器用な頑固ジジイの漢気…みたいな話には基本弱い。
冒頭のクレジットの間中走る機関車。何車両あるんだよ!?みたいなのもいいですねとても。

<新文芸坐 シネマテーク>
リヴェットとベッケルはサボったんでひさびさの新文芸坐シネマテーク。

どんなジャンルの作品でも当てはまると思うが、様々な要素があるべき箇所にピタリと的確にバランス良く収まっていると、あまりに自然に見えるがゆえに往々にしてその凄さを見逃しがちになったりするものだろう。この『鉄路の男』なんぞはそんな感じ、さりげなく、的確に、静かに凄い作品だと思います。

冒頭、線路上に固定したカメラの上を汽車が通り過ぎるタイトルバックでのショットから実に良くて軽く胸騒ぎがするが(よく見ると同じカットを繰り返しループしている。こんなに長い車両編成があるか? なんて最初は思ったが)、人物の対話に際しての顔を捉えた固定ショットの的確さとー最近ゆらゆら揺れる船酔いみたいな疑似ドキュメンタリー的カメラの映画ばかり観ていたので、的確な場所にカメラを置くことによる揺るぎない固定ショットの連鎖/モンタージュの良さに乾きが癒される思いでございましたー、最後の方にだけ真正面からのクローズアップの連鎖が出て来ることも、この「オジェホフスキに関して証言する3人目」に対する所長の疑念を表して余りあるが、このように人物の表情を余さず捉える視点/技法があるがゆえに、余計に生きてくるのが駅のホームにたむろする人々を舐めるように緩やかな移動ショットで捉える対照的なシーンであったり、あるいは黒澤明の『羅生門』よろしく死んだ頑固爺のオジェホフスキと関わった同僚がそれぞれの立場から事件を回想する構成において、オジェホフスキという対象の見え方が観客に微妙に異なって印象付けられ、それ故にこの事件の真相は一体どうなっているのか、というサスペンスが呼び起こされたり、と、スペシャルな飛び道具を使うでもなく、ハッタリかまして異質かつ目立つシーンを挟むでもなく、いわばシンプルっちゃシンプルな語りの構成でこのようなサスペンスが生起するのがエグい。こういう濃縮的なうま味のある作品はやはり古典を観る(もう「古典」だろう)醍醐味かと。いや、最近クラシック作品観てないんすよね。

んで、結局オジェホフスキは「実はめっちゃいい爺さん」ってことでオチが付いたようにも見えるけど、あくまで会議の中で1人の鉄道員が「私はこう考えたのだが」と言ってフラッシュバックでその決定的なシーンが登場した訳だが、実際そうだ、というようには描かれていない。またこの辺りのボカシ方も上手いよねえ。まあ途中でこの爺の強面に潜むいいヤツ的描写はいくつかありはしたんですが(公園のシーンでの握手を求める屈託ない笑顔はまじで同じ爺かよ、と思わせられますよね)。

確か筒井武文がポーランドの監督では結局スコリモフスキとムンクにとどめを刺す、とか書いてましたが、なんか分かる気はします。
ぷりん

ぷりんの感想・評価

4.4
当時ポーランドで主流であった社会主義リアリズム映画とは一線を画する。
勤労な鉄道員という共産主義的主人公を魅力的に描写した上で、当時の共産主義の腐敗を描く。もはや敵はスパイなどに象徴されるような外部ではなく、内側にあるのではないか。「息苦しい」社会に風を通そうとせん傑作。
新文芸坐シネマテーク

主人公のじじいと同じような傲慢・頑固・怒りんぼの三拍子揃ったハゲ上司が職場にいるんですが、実際に接しているとマジでストレス半端ないです笑 それはさておき、映画は端的に傑作でした。死亡事故の再構成に宿るドラマ、列車走行音の鋭い重厚感、顔に宿る印象を的確に捉えるカメラ、あらゆる要素が過不足なく機能してて全く飽きない。白黒映像の列車はかっこよすぎだし、じじいとスターリンシンパ上司の間で揺れる若者の苦悶や、神経痛を隠そうとしてバレるしじいの侘しさなど、細かい演出によるペーソスも効いてる。そして、事故原因のさりげなくも明確な提示が素晴らしすぎる。決定的瞬間に潜む快感!ジワジワと痺れました。

クソジジイの笑顔はめっちゃかわいいわけで、これからはクソ上司にも優しい気持ちになれるかな…無理かな…
ジジイー!というか、子どもー!
見終わったあと中村登の「塩狩峠」みたくなったり、松本清張でもありだなと思ったりしました。
ubik

ubikの感想・評価

-
新文芸坐シネマテーク
素晴らしかった。天才がつくった映画。
ベテラン機関士が助手を心配するときの表情の素晴らしさたるや!
明らかにポーランド語にはあるのに、日本語訳に敬称がなくて呼び捨て上等にドキドキ感ましまし
モノクロの画面を漆黒の汽車が疾走する一発目のカットから心鷲掴み。
1人の機関士が汽車に轢き殺される事故が起きた事件を推測するサスペンスだけど、事件がどうやって起きたかってよりこの1人の時代遅れのオジさんの生き様がリスペクトをもって描かれてて、古くさいし偏屈なんだけど愛くるしくてラストを見たら尊敬というかなんかもう認めざるを得ないですね。
ポーランド映画ってそこまで詳しくないけどこんな映画撮る監督が1950年代に既にいたのかよって思った。
shibamike

shibamikeの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

走り抜ける列車を真下から映した映像にクレジットを表示するという始まりなのだが、メチャクチャカッコいい。
列車の長さが足りずリピートされるのはご愛敬だが、監督やるぜ!

ストーリーはベテラン機関士(禿げたヒトラーもしくはイケメンの波平みたいな感じ)の謎の死を解明するため、関係者が回想するというもの。こういう映画、大好き。

死んでしまうベテラン機関士は若手から見たら完全な老害(嫌な言葉だこと)。こういうご年配の部下にはなりたくないなぁ、と他人事ながら思う。しかし、ベテラン機関士の仕事ぶりというのは中々どうして微に入り細に入るチェックや誇りを持った姿勢など、大したものであった(だからベテランなのか)。でも、やっぱりああいうご年配の部下にはなりたくないなぁ、と思う。

印象のあまり良くなかったベテラン機関士の評価が180度ひっくり返り、事件の真相がハッキリするのは無傷の懐中時計とマッチの燃えかす8本が死亡現場に残っていたことが分かったとき。ベテラン機関士は正に「真の機関士」であった。鉄路の男。ただ、何故頑なに石炭の節約を嫌がったのかがよく分からなかった。

信号係の娘がイタズラでランプを触ったこと、信号係がしっかりランプの給油を確認しなかったことが非常に悔やまれる。仕事はキッチリしなくてはいけない!

最後の所長の台詞は極力真似しようと思った。「息苦しいな。」と言いながら窓を開ける。(誰もこの映画の真似と気付くことはない)
菩薩

菩薩の感想・評価

4.4
無骨で反骨、頑固で強情、一言で言えば「自分、不器用ですから」の高倉健タイプで時代に取り残された一人の誇り高き機関士、いや鉄道員(と書いてぽっぽやと読んでほしい)、どんな世界であれ時代の変わり目にはいつもこの様な男の影があるのだろう。「俺の若い頃は」なんてフレーズは部下のモチベーション下げるランキング1位の戯言な訳で多用は避けるべきだけど、それでも彼には40年に渡りお客様の安心と安全を守り抜いて来た自信と自負と歴史があるわけで、40年生きてられっかすら分からない自分としては素直に尊敬の念が絶えない。そんな彼がある日電車にはねられて死んだ、何故だ、腹いせか、単なる自殺か、それともテリーマンのマネしようとして失敗したのか(分かる人だけ分かれば良い)、彼の死の真相とその人となりについて語り合う関係者達、そして導き出されるある一つの「仮定」に、おそらくあの場に詰めかけた多くの映画ファンが「ジジイ!!!!」と心の中で喝采を挙げた事であろう。仕事中は強権的に部下を支配するジジイも、プライベートでは柔和な笑みわ零す好々爺、おそらく奥さんはそのギャップに萌えてヤラれたのだと思われる。正直言うとギリギリで避けりゃええやんと思わなくも無いが、仕事が全てだった男がそれを失い、そして最後に見せるプライドとしてはそれではやっぱり格好がつかない!ジジイ、素敵やん!と言うかとにかくただそれだけでも機関車が絵になるし車輪と汽笛が音になる、そしてあのラストシーンは明日からそこかしこの社内会議中にマネされる事になると思う、紛う事なき傑作だった。
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