アクト・オブ・キリングの作品情報・感想・評価(ネタバレなし)

「アクト・オブ・キリング」に投稿された感想・評価

HK

HKの感想・評価

3.9
ジョシュア・オッペンハイマー監督によるインドネシアで実際に起った共産党員狩り「9月30日事件」を題材に扱ったドキュメンタリー映画。

何気に、ドキュメンタリー映画は初めてのレビューになりますね。

かつて、インドネシアでは100万人単位の国民が共産党に傾倒しているという理由だけで民間人に大量虐殺された。

映画冒頭で「1人殺せば殺人だが、100人殺せば英雄となる」というテロップが出てくるが、酷いかもしれないがあながち間違っていないのかもしれない。100人単位もの犠牲者の名前を我々は覚えることはできない。それは数の単位でしかなく、少しも感情が入る隙もない。

そんな人でなしのことをした人間が、その行為を昔の思い出話のように嬉々として語り合うシーンがある。そしてそんな和やかな光景で映画が構成される。この映画を虐殺被害者が見たら、恐らく失神するのではないか。

そんな彼らに自分たちのやったことを映画として撮らせる監督さん。ある程度映画を撮る才能はあるのか。虐殺をするシーンなどを見てみると意外と迫力がある。

そして、かつて自分がやった行為を再現し、映画内で被害者として演じるアンワルさん。撮影終了後、そのシーンを孫と一緒に見る。そこで彼は初めて思い知るのだ。自分が犯してきたとんでもない過ちを。

最後は実際の殺害現場に赴き、そこでかつて自分がやったことを思い出し、とんでもない吐き気に襲われる。人間はこうでもしないと肌身で気づけないのかと見ているこっちも恐ろしく感じるのである。

共産党員ってだけで罪になるのか?右も左も思想をもっているんだったら別にいいじゃないのか。奴らが悪いからやった。仕方がない。それで済めば元も子もない。

人間は失敗から何も学ぶことができない、自分が窮地に陥ったり、周りの雰囲気に合わせようとするとこれほどまでに愚かなことをするのか。しかも罪の重さも自覚することができない。

それは多分私もそうだ。人間は恐ろしい。

映画におけるインドネシアの選挙事情も知れてよかったですね。候補者たちの人たちは当たり前のように国民から賄賂やら政治献金を貰っているらしい。腐敗しきってますわ。

デヴィ夫人もこの映画賞賛していましたからね。それほどに価値のあるものであると思います。

いっつもこういう重い問題は被害者視点が多いから、加害者視点から見るものも非情に新鮮でいい気がします。だからこそお勧めしたいですね。
AM

AMの感想・評価

4.2
その時代の空気感によって、仕事として虐殺を行ったアンワルたち。国を守った者として誇らしげに暮らしているが、アンワルは最初から自分がやってことで苦しんでいる。虐殺を再現しているうちに、自分がやって事は罪なのだと知ってしまう。冒頭で嬉々として再現していた虐殺現場に再びやってきたアンワルがひたすらえずき続けるラストが強烈。虐殺者には罪と知りながら過去と距離を置き自己防衛したり、まったく罪悪感がないままの者、誘導しながら一切手を汚さない者。悪の多様さが描かれる。一番ゾッとしたのは「ANONYMOUS」だらけのエンドクレジット。
s

sの感想・評価

3.5
なんとも胸糞悪い作品だけど、大量殺人者がのうのうと(しかも結構優雅に)生きている現実があるのだと思い知らされた。
自分がやったことを罪だと思うか、という問いかけへの返答はそうだろうなという感じだった。
それを良しとしてしまっている国や社会構造自体が恐ろしいよなと思う。
胸糞悪いを通り超して理解不能。立場や状況は全く異なるがこの共産党員に対するマスキリングはポルポトのクメールルージュと同類に語られても良いのではないだろうか。

当時の殺人鬼達は現在もその正当化を誇示するかの如く肩で風を切って生活している。
インドネシアの闇というかその状況を許しているインドネシアと言う国自体が闇の中にあるような気がしてならない。
ぐう

ぐうの感想・評価

3.5
1965年にインドネシアで共産主義者を虐殺した(9月30日運動の)当事者、プレマン達(=ギャング)が当時の様子を映画化するドキュメンタリー、といったらいいのかな…。

国の背景を理解してもう一度観ないと全容把握はできないと思うんだけど、繰り返して観る気力は今はないな。何から何まで異様だった。と思えるのは幸せなことなのだろうか。

ボスにとっては悪夢から少しでも逃れるためのセラピーになったのか、それともトラウマを呼び覚ますものになったのか。罪悪の念は深層意識では忘れようもないんだろうなー。

ただ、戦争でも犯罪でもそうだけど、いくら殺した者が懺悔をしても、殺された者は戻ってこない。罪のない人がどれだけ人の手によって殺されてきたかってことですよ。自身の死の復讐は不可能なのだから、殺人てのはやはり罪深いものです。

「あなたには本当の拷問の気持ちは分からない、これは映画で、実際の彼らは殺されると分かっていたのだから」の台詞は、ずっと避けていたかった事実を突きつけられたんだろう、それからのショットは押しつぶされそうになっていたように思える。

それにしても他の方も言及していたけど、制作クレジットがAnonymousだらけの映画は初めて観た…。まだ50年経っても禁忌事項が多いのも闇深ですな。
スタッフロールがアノニマス(匿名)だらけ。
まだ終わっていない。
JBOY

JBOYの感想・評価

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子どもや母親たちが再現芝居を越えて泣いたり、呆然となる場面と演技を通して 被害者の気持ちが今なら分かると加害者が涙ながらに語ったときに
撮影者が いや、当事者たちの思いはそんなものではない、"本当に"死ぬと分かっていたんだから、と言葉を返した場面がとても印象的だった。
ラストの聞いたことのないような嗚咽の音も
しかし平然と美人なら犯したい14歳の女の子なら尚更良い天国だみたいな事を話す輩たちには当然だけれども理解し難いものがあるし、信じられない光景であった。これは当然咀嚼出来ないな。
あらすじで興味持ったが、合わなかったな...。加害者がもっとこう劇的に感情が動くのを期待してしまっていた
ふ

ふの感想・評価

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「怖いか?ただの映画だ」
「じいちゃんいじめられてるよ 悲しいね」

の後の、

「俺が拷問した人も同じ気持ちだったかな?なぜならここで俺は尊厳を」
「あなたに殺された人たちはこんな気持ちでは…これは映画です。彼らは殺されるとわかっていました」
「しかしおれはわかるんだ。罪人ってことなのか」

共感でも追想でも足りない
全く同じくらいの強い気持ちを新しく持つ、それをすり合わせる、もしくはぶつけ合うようなことでしか、足りない。
eviny

evinyの感想・評価

3.5
前半のドン引きするくらい能天気な殺人再現から終盤のあの展開はおそらく作り手も予想してない偶然の産物だったと伝わってきた。
これぞドキュメンタリーというリアリティで賞賛されているのも納得。

インドネシアの虐殺については無知だったが冷静に考えるとたった数十年前に飛行機で数時間で行けるところでこんなことが起こっていたと考えると人間って改めて恐ろしい。。

インドネシアの現地ではいまだにタブーなネタらしくエンドロールでの製作者ネームはほとんどがanonymousになっていてそんな環境のなか映画を完成させた監督の気合いを感じる。

ドキュメンタリー好きなら避けて通れないだろう作品ですね〜
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