ユーライさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ゴジラ ミニラ ガバラ オール怪獣大進撃(1969年製作の映画)

5.0

初代『ゴジラ』というのは私からしてみれば名作、伝説を超えてほとんど神話の域にある。それを作った監督が、戦争や核の脅威から遥か遠いところまで行ってしまった毀誉褒貶含む作品群を量産した後、メイン・ターゲッ>>続きを読む

ゴジラVSビオランテ(1989年製作の映画)

4.3

昔、シリーズを初代から一気見した時はどこがそんなに人気で斬新なのか釈然としなかったが、今なら良く分かる。『84』で携わっていた旧作のスタッフを一気に世代交代させて、ようやく「自分達のゴジラ」が観られた>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.8

素人には、正直大した映画とは思えなかった。散々作られたフォロワーによる劣化コピーを見せられたように感じる。思いの丈をぶつけているのは伝わるが、部外者には何のこっちゃ全然分からん。文脈を知っていれば楽し>>続きを読む

カルメンという名の女(1983年製作の映画)

3.0

週末の仕事帰りに観るゴダールは睡眠導入剤でしかなかった。やっぱり合わない。犯罪に走って逃避行をする男女、芝居が無意味に過剰、ナチュラルに男尊女卑的台詞、整合性の取れないお話、銃撃戦やってんのに呑気して>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.0

どこか落ち着かないザワザワとした感触で掴みはバッチリだが、問題の少年二人にカメラが寄ると途端に凡庸になる。作中の言葉を借りればこんな「しょうもない」タネ、そこまで大事に隠し持っておく程でもない。カンヌ>>続きを読む

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)

3.5

ジョジョ立ちをさせない、擬音を付けないといった方針で「成功例」の名声を得たシリーズだが、「敬意」を払っているのは十分理解しつつも最早別物になっているようにしか思えない。ドラマ版からの違和感がいよいよ無>>続きを読む

最後まで行く(2023年製作の映画)

4.8

終盤、いよいよタイマン前に訪れる柄本明宅の武器がいっぱい隠し部屋を見て「おいおい『いつかギラギラする日』か」と思っていたら、エンドロールを眺める脳内ではショーケンの「ラストダンスは私に」が流れていた。>>続きを読む

零落(2023年製作の映画)

3.6

いつの間にか定着してしまった「面白いおじさん」としての竹中直人が躁ならば、これは鬱。もともとこっちの側の人なんだろうなーと思います。盟友である石井隆と押井守を足して二で割ったような。やたら饒舌だし、ネ>>続きを読む

せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.5

近作の流れとしてある「世界と個人の関係」のこれまた一つ。阪本順治はセカイ系の作家や(言いがかり)。サイレント映画に倣ったいかにも訓話的なお話でそんなにノれず。ギャグも別に笑えない。うんこに焦点を当てて>>続きを読む

ヴィレッジ(2023年製作の映画)

3.0

柳町光男『火まつり』には及ぶべくもない。色々言われた『新聞記者』の頃から一向に改善されない「社会派気取って世界観が漫画」である悪癖が垂れ流されている。寓話にもなり切れてない。マーティン・マクドナーって>>続きを読む

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

2.7

前作未見。殺したのは良かったよ。『リコリコ』で一番不満だったのは、双方痛み分け苦い現実を受け入れていきましょうねチャンチャンだったから。そんなんどうでもいいから殺せよと。あのまま感傷で流されていたら本>>続きを読む

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

2.5

『GRIDMAN』は数話のみ、『DYNAZENON』は未見の状態で観た。『GRIDMAN』は放送当時、今更自意識90年代かよ批評受け狙いかと洒落臭さが目について途中で切った。総決算はどうなっているのか>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.5

『シン・ウルトラマン』の欠点を改善することなくそのまま受け継いでいて愕然とさせられる。もちろん、『シン・ゴジラ』の時から庵野秀明の悪癖は見え隠れしていたのだが、樋口真嗣とのタッグが功を奏したのか、震災>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.8

この監督(スピルバーグ)はパンツを脱いでいる。腹掻っ捌いて自分のはらわたがどういう色、形、匂い、感触をしているのかじっくりと確かめながら作っているような極私的映画。魑魅魍魎が跋扈する地獄のハリウッドで>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.0

とにかく理屈抜きの「面白い」映画を期待したが、全然合わない。まずマルチバースをSF的に解釈するのではなく、ナンセンスコメディとして消化していく手付きが駄目。どういう条件を満たせば成功するのかルール設定>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.2

マジキチヴァーホーベン先生待望の新作はまさかの百合姫掲載で、しかし案の定『ささやくように恋を唄う』ではなく『彩純ちゃんはレズ風俗に興味があります!』の方だったという感じだ。繊細さとは遠いところにある。>>続きを読む

#マンホール(2023年製作の映画)

4.1

上映時間の都合が良かったからという不純な理由で観た。全然悪くない。作家性の強い監督がジャンル映画を手掛けるの面白さがちゃんとある。ウェルメイドなワンシチュエーションスリラーにすることも可能なのに、本来>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

4.0

同性愛者のお話としてではなく、前触れもない「その後」で展開される、母子ものとしてのインモラルな危うい関係性の方が興味深かった。その境界線に踏み込んでいく増村的な勢いがあればもっと好みだったのだが、誠実>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

4.8

「自分の人格が映画によっていかに形成されてきたか」をbioで滔々と語りたがる輩はよく見かけるが、同根の図々しさがある。誰もあんたのことなんて興味ないし、「これは自分のために作られた映画だ!」なんて思い>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)

3.0

「若者にも届くクールでカッコいい時代劇」を標榜し、古臭いイメージを拭いたい心意気は、樋口真嗣が担当した予告編(VFXを担当した特撮研究所繋がり?)からも伝わる。しかし、画をいくら凝っても平坦な演出はス>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.3

精霊なんてタイトルにあるからファンタジーなのかなと思っていると、いい年したオッサン二人が些細なことで仲違いするしょうもないミクロな問題が延々と続くので驚かされる。「お前との馬鹿話よりもっと有意義に人生>>続きを読む

マッドゴッド(2021年製作の映画)

4.3

ネットで偶然見かけたら「検索してはいけない」に載っている類のブラクラ映像だと思い込んでしまうような地獄絵図が、脈絡なく垂れ流しにされる。高名なクリエイターのクレジットがあるから安心出来るけど、「精神を>>続きを読む

櫻の園(1990年製作の映画)

4.8

宣伝からは「女子校における少女達の秘め事……」みたいないやらしさを感じさせるが、ファーストショットから誰もいない隙を見計らい学校に男を連れ込んでイチャイチャするという、安易な幻想を粉砕するシーンから始>>続きを読む

キャリー(1976年製作の映画)

3.8

野郎が「鬱憤を爆発させて皆殺し」の例は数多くあるが、女性が当事者であるパターンももっと作られていい。集団で孤立するキャリーの図を、バレーで表すファーストショットが秀逸。フィクションにおいて「不細工」だ>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

4.6

スクリーンで初めて無修正を見てしまった。モザイクがかかっていた気もするが、あそこまで形が判別出来るならモザイクの意味が無いと思う。映画としてどうこうより、性器を見てしまったこと、全裸中年男性が持つ被写>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.5

予告を見た時に、最近の画面密度の濃いTVシリーズと比較すると弱い、SAOには金かけてる癖によとか思っていたが、エンドロールを見ると原画に井上俊之と松本憲生がクレジットされているので驚かされる。異世界に>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.6

「聴覚障害者のボクシング」という難しい設定を成立させるため、必然的に映画の純度が高くなっている感がある。漫画でも小説でもない、映画でしか表現出来ない複雑なニュアンスが静かな画面で渦巻いている。それを正>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.6

スポーツや部活といったものに対する不信から警戒していたが、終始「これしかない」と納得させられる迫力に負けてしまった。1カット単位で検討を重ねた結果の説得力がある。映画として特別上手いとは言い難いが、実>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.0

『天気の子』に感動した身としては、何でそんなに落ち着いてしまったんだと言わざるを得ない。あの超大作アニメ映画にあるまじき堂々たる野蛮なアナキズムの発揮は、震災をモチーフに留めていたからこそ得られていた>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.5

『勝手にしやがれ』はノれたのにこちらはあまりピンと来ず。途中から「格好つけてるようだけど、この映像で遊び倒す感覚は今ならポプテピピックだろ」とか考えたのが良くなかった。ちょっとした瞬間や台詞に宿るエモ>>続きを読む

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.7

原作を読んだ時に覚えた「現実にこんな女いるかよ」という違和感は、生身の役者が演じることによってむしろ解消された感覚がある。私の生活圏から隔絶されているだけで、本当にああいう無闇矢鱈と破滅的なパーソナリ>>続きを読む

乱れる(1964年製作の映画)

4.5

塩田明彦「映画術」から。もう本当に書かれている通りだが、高峰秀子は橋を渡らない女として設計されている。酒屋の狭っ苦しい家屋しか殆ど映らない本作にあって、ひたすら加山雄三から逃げ続ける。共に歩かず一歩先>>続きを読む

フラグタイム(2019年製作の映画)

5.0

百合映画オールタイムベスト。パンツをめくってタイトルバック、下品な『リズと青い鳥』。学校で鬱屈している陰キャとクラス一の美人&優等生のカップリングは定番だが、「時間停止」という青春が有限であることを表>>続きを読む

ヘルドッグス(2022年製作の映画)

4.0

久々のモード全開かと期待した。別に日本映画の革命でも何でもないいつもの原田眞人。宣伝の雰囲気から邦画が横文字でノワールと謳って見せる時特有の痛々しさが散見されるが、それは邦画の問題ではなく原田眞人の問>>続きを読む

夏へのトンネル、さよならの出口(2022年製作の映画)

3.3

酷な表現をすれば「AIに新海誠と大林宣彦を学習させて出力した」くらいに物語が無味無臭過ぎる。ありきたりの域を超えて、フリー素材で構成されたような味気無さ。別に逆張りをやれば偉い訳でもないが、一から十ま>>続きを読む

GONIN サーガ(2015年製作の映画)

5.0

「いい気なもんだぜ。俺達は糞と小便に塗れてるってのによ――」。ひたすら降りしきる雨。ネオンと合わせて象徴的なモチーフを石井隆は自ら「死に接近するため」と語っているが、結果的に遺作となった本作が一番死に>>続きを読む