ユーライさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

3.5

前作の欠点をそのまま受け継いでおり、映画としては相変わらずガタガタ。にも関わらずマシに見えるのは、思い切って合戦だけで通し切っていることによるが、所詮『怒りのデス・ロード』のパチモノにしかなっていない>>続きを読む

湖のランスロ(1974年製作の映画)

4.1

初ブレッソン。理解不能ではなくむしろ傑作であることは分かる……が劇的さを排した作りが眠気を誘ってしょうがない。それは凄惨な殺し合いをどこか間の抜けた距離感で捉えている冒頭から始まっている。誇り高い騎士>>続きを読む

神は見返りを求める(2022年製作の映画)

4.8

これまでの吉田恵輔作品から頭一つ二つは抜けている傑作。これまでは主に物語の力で興味を持続させていたが、今作は「見たくないものを無理やり見せられる」映画的な魅力を獲得してしまっている。『空白』でもカット>>続きを読む

天使のはらわた 赤い眩暈(1988年製作の映画)

5.0

初監督作にして以降の作品に見られるモチーフが既に登場している。死体と同伴するのは『ヌードの夜』、バブルの影響で落ちぶれた男の狂気をさらに拡大していくと『GONIN』になる。もちろん雨やネオン、超現実的>>続きを読む

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

3.7

こういう周囲と馴染めずに鬱屈していく青年の映画は我が国にもゴロゴロしているが、銃による武装に傾倒していく、そしてフィクションであることを公言しながら実録の要素がある点で『丑三つの村』が当然のように思い>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.8

庵野秀明ではなく樋口真嗣の映画。物議を醸した実写版『進撃の巨人』から七年を経たが、良くも悪くも全く変わっていない。『シン・ゴジラ』と同様やたらと監督が多い中、どの程度の裁量が割り当てられているのか不明>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

5.0

当時から人死にを画で見せたがらない姿勢には不満が残るが、それでも完璧というか成立自体が奇跡みたいな映画。オタクが思い描いた理想のゴジラ映画を形にしてしまっている……が故に五年以上実写による国産を出しに>>続きを読む

ULTRAMAN(2004年製作の映画)

4.6

当時の宣伝を見ると、なかなか挑戦的な文言で「大人向けのヒーロー映画を!」と書いてあるが、何回観返してもかなりの精度で達成しているように思う。ただ、明らかに意識下にあるであろう「ガメラ三部作」のような特>>続きを読む

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒(1999年製作の映画)

5.0

オールタイムベスト。怪獣映画のフォーマットを使って、1999年の世界滅亡を不可逆の切迫感で描き出している。『1』『2』がパブリックな作風だったのに対して、一気に膿を出すように趣味を入れまくった感覚がた>>続きを読む

ガメラ2 レギオン襲来(1996年製作の映画)

5.0

前作は王道の復活を目指したら必然的にリアリズムに徹した作風になったが、今作はその方針をより突き詰め、一見さんの入りづらいハードコアな侵略SF映画となった。出てくる人達が皆博識な理系っぷり。「怪獣映画は>>続きを読む

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

5.0

初めてスクリーンで、且つ久しぶりに観たのだが、エンドロールの「神話」で泣けてきた。個人的な事情もあるが、かつて信じたフィクションの理想形を自分達の手で作り上げる、という本編に現れている意志の結実と歌詞>>続きを読む

パリ、テキサス 2K レストア版(1984年製作の映画)

4.2

そのとき雄一郎は亀有署の会議室にいたのだが、蛍光灯の明かりだけが白々しい殺風景な空間と、安物のパイプ椅子に座っている疲れた中年男の姿が夜の窓に映っているのを、ただ眺めるともなく眺めながら録音を聞いてい>>続きを読む

(1954年製作の映画)

3.7

この「男女」の造形は、後年の多種多様なフィクションに影響を与えていると思う。聖なる白痴は欺瞞にしか映らないけど、これは単に天使化せず一歩は踏み込んでみせている。加虐性を持った男と被虐体質を持った女の愛>>続きを読む

ユンヒへ(2019年製作の映画)

4.0

時代によって離れ離れになるしかなかった二人のその後を描いた『夢の端々』。ただ、あちらが時々を象徴する事物を積極的に取り入れていたのに対し、こちらは具体を避けている感がある。説明を排することによってどこ>>続きを読む

卍 まんじ(1964年製作の映画)

4.5

増村特有の濃さがそのまま百合としての強さになっている。その濃さは某姫が仰け反るほどで、「裸を見せてくれないと絶交する」だの「名前を手の平に書き綴る」なんてそうそうない。間に男が挟まることにより関係性が>>続きを読む

港の日本娘(1933年製作の映画)

3.5

某本で紹介されていたので。Amazonプライムで観たのだが、まず後付けと思われる洒脱なBGMが陰鬱な物語と恐ろしく合っていないので消音で良い。画質が悪いので字幕を読むのも困難(表示時間が短い!)なら登>>続きを読む

旅愁の都(1962年製作の映画)

4.0

宝田明はプレイボーイにも関わらず、女性を点数付けしたり他の男性陣も容赦なく平手打ちを発動させているのだが、俗っぽいメロドラマにも関わらず何故か気品を損なわないのがかつての日本映画の懐の深さを感じさせる>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

3.5

『岬の兄妹』がベストだったので期待との落差がある。とにかく「変わった事をやりたい」が優先になり過ぎていて、スケールを広げた結果手に余って暴走している印象。『岬の兄妹』は二人の世界に絞ったことによって監>>続きを読む

弟とアンドロイドと僕(2020年製作の映画)

4.7

監督の精神状態を心配したくなるような病んでいる感じが好き。というよりこれまで「男らしさ」にこだわってきた阪本順治の挑戦。中年にもなって「僕はここにいるのか」という中学生で卒業するような自意識に悩む姿は>>続きを読む

クラッシャージョウ(1983年製作の映画)

3.7

アニメーターが監督に挑戦した例の一つ程度の認識だったけど、普通に面白い。何より尺が二時間以上あるにも関わらず、作画がほとんど息切れしていないのは時代を考えると驚異的。ザ・安彦なアニメーションが全編を覆>>続きを読む

ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

4.0

ミュージカルも61年版も未見、最低限の知識すらない状態で鑑賞。そもそもミュージカルについて知らないので、「適当に歌って踊って終わり」くらいの山あり谷あり具合なんだろうと思いきや、それとは真逆と言ってい>>続きを読む

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)

2.5

誰向けの映画なんだ。これまで特撮とは縁が無かった監督が得意分野であるコメディで挑戦、それなりに期待はさせたが予想以上に明後日の方向で落差が酷い。「空想特撮」に賭けて毒の含んだ風刺劇を期待すると緩さに唖>>続きを読む

さよならくちびる(2019年製作の映画)

3.8

「映画術」はバイブルだが、監督した映画を観るのは初めて。ロードムービーであるから、車内から捉えた風景が刻々と変わっていく様に合わせて関係性も変化していく。三者の組み合わせ、画面のポジショニングからサス>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

3.5

作画はTVシリーズに引き続き安定し動きまくるが、一本の映画として観ると原作の構成をそのまま団子にして繋げている歪さが目立つ。単話を連続上映しているような。ラストバトルも複数同時進行によって流れが寸断さ>>続きを読む

マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

4.5

『シン・マトリックス』あるいは『マトリックスはつらいよ お帰り ネオさん』。作家がほとんどヤケクソな自己言及を経て、物語を定義し直し自分の手に取り戻す。「もう一回始めればいい」というポジティブにやられ>>続きを読む

マトリックス レボリューションズ(2003年製作の映画)

2.5

何つうか、起こる出来事が全部どうでもいい。1作目の売りは「ビジュアルショック」と「現実と非現実が曖昧な酩酊感」にあったのにどっちも放り投げている。個性豊かなキャラクターや緻密な設定で固めた作品ではどう>>続きを読む

マトリックス リローデッド(2003年製作の映画)

4.3

前作より全然好き。「この現実は嘘かも知れない」という胡蝶の夢な魅力は大幅に後退したが、マトリックス内で繰り広げられるアクションには、「もしこういう日常的な場所で超人達が戦っていたらどんな感じだろう」と>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.0

ハードコア新社会人百合。普通なら「貴女は私が守るわ」で一方的にイノセントな被害者属性にするのに種明かしとして裏切っていく安易な感情移入を拒む展開がむしろ良い。「舐めんなよ」で安パイを取らない姿勢に価値>>続きを読む

マトリックス(1999年製作の映画)

3.7

オタク君ってさぁ……こういうお話好きだよね、現実ではイケてないけど別の世界では救世主なんだって感じの……。「自分達が生きている世界が実は仮想だった」モノは古今東西色々あるが、例えば『メガゾーン23』や>>続きを読む

梅切らぬバカ(2021年製作の映画)

3.8

ちゃんと「映画」になっていた。講演を聴きに行くのではなく、劇映画である以上は娯楽として「楽しめる」ものであってほしいと思う。尺と合わせて品が良く、ウェットになり過ぎないのがいい意味で日本映画らしくない>>続きを読む

ヒルコ/妖怪ハンター レストア&リマスター版(1991年製作の映画)

3.6

『鉄男』に続く二作目に「原作が諸星大二郎、主演は沢田研二」を撮らせようと決断した人は誰でせう。ミニマルでディティールを追求する資質とオーソドックスな物語構造が合ってない。本作でメジャーの体制に向いてい>>続きを読む

火まつり(1985年製作の映画)

5.0

原作ではなく脚本として中上健次がクレジットされているので、先行の映画化と比べても独自色が強く文脈を理解している必要がある。柳町光男作品のカメラは安易な寄りやイメージショットではなく、引きの視点で俗世間>>続きを読む

模倣犯(2002年製作の映画)

3.7

困難なテーマに挑戦しているが、上手くいっていない。だが、この問題提起は20年経った現在でも通用する。森田芳光らしく、生きている人間でさえもどこかマテリアル的、無機質に映していく感覚は今作においてTV画>>続きを読む

御法度(1999年製作の映画)

3.5

『燃えよ剣』(2021)の前に観ておく予定がズレた。要は男の園に美少年のサークラが入って来てしっちゃかめっちゃかになる俗っぽい、昼メロ丸出しのお話なのだが、陰影を強調した撮影で高尚だか何だかよく分から>>続きを読む

土竜の唄 FINAL(2021年製作の映画)

3.5

シリーズ未見原作未読、リアリティも整合性もない物語の中で思いつきのおちゃらけ(投げやりではない)が連続していくので眩暈がするが、それこそフジテレビ的なバラエティ番組にはならずにギリギリ映画を保っている>>続きを読む

ひらいて(2021年製作の映画)

4.0

原作既読。美雪の視点から始まり、最後も愛とのツーショットで終わることで原作より百合要素が強化されて前面化している。忠実と思いきや結構変更点を加えていて、積年の原作を自分のものにする気概を感じる。純文学>>続きを読む