熱狂 ドンバス交響楽の作品情報・感想・評価

熱狂 ドンバス交響楽1931年製作の映画)

Entuziazm (Simfoniya Donbassa) /The Donbass Symphony

製作国:

上映時間:67分

3.6

『熱狂 ドンバス交響楽』に投稿された感想・評価

事実の運動を映像の運動に、ってどういうことかあんまりわかってなかったけど、なるほどこれは運動だ…… 五ヵ年計画の記録映画にしてヴェルトフ初のトーキー、視覚情報だけで十分に音楽的 線路にハンマーを叩き下ろす労働者の動きと連動したダイナミックな運動するショットの反復、対象の増殖、破壊された正教の教会に逆再生で宙を舞っておさまる赤い星 カメラはこんなにジグザグに動いていい 
pherim

pherimの感想・評価

3.7
製鉄所の勇姿と、大地駆る農耕機の躍進。

スターリン5ヵ年計画を、ショスタコーヴィチ交響曲3番が全力で祝すジガ・ヴェルトフ1930年作。音へ特化したサスペンス調の導入が意外性あり魅せる。

老婆祈るキリスト像が抹消されゆく不穏と、
笑う工員や踊る農婦らとの鋭き対照。


本作が引用されるドンバス舞台のヴァシャノヴィチ2019年作『アトランティス』
https://twitter.com/pherim/status/1539440639892664321

セルゲイ・ロズニツァ2018年作『ドンバス』
https://twitter.com/pherim/status/1525445955570388992
Jaya

Jayaの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

五カ年計画真っ只中のドンバス地方の様子を映したプロパガンダドキュメンタリー。何だこれは!?凄まじい。腰屈めた男たちの行列が頭カチ割られたような衝撃でした。

主にショスタコーヴィチの交響曲第3番「メーデー」に合わせて、宗教改革、重工業化、農場集団化をそれぞれ映し出す構成。映像も音も、余りにも鮮烈な表現の連続に目が釘付けでした。プロレタリア美術の雰囲気も強い。

映像と音の編集のセンスが途轍もない。これで初トーキーとかどういうこと??さまざまな前衛的映像効果に、余りにも効果的に乗せられる音楽、声、音。そして描き出される対象を完璧に引き出すような撮影と編集。空間にまで及ぶような時間の長短の操り方がえげつない。フィルムの劣化なのか意図的なのか判断がつかない箇所も。

プロパガンダであることは明白なのですが、そのことすら表現に取り込むような手腕が凄まじく、映像の意図を考える暇すら与えられないような圧倒的な表現力にひたすら鳥肌が立ちいました。

今となっては五カ年計画の行く末を知るが故にそう感じた面もあるかもしれません。既に綻びは見えていたはず。

まさに映像体験と言うに相応しい圧倒的な音と映像に終始飲み込まれてしまった、時代を悠々と飛び越えてくるとんでもない傑作でした。
町蔵

町蔵の感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「熱狂 ドンバス交響楽」
Энтузиазм (Симфония Донбаса)
Entuziazm: Simfoniya Donbassa
1930/ソ連/1930/65min
製作:ウクライナ・フィルム
監督:ジガ・ヴェルトフ
助監督:エリザヴェータ・スヴィーロヴァ
撮影:ボリス・ツェイトリン
音響:ピョートル・シュトロ
音楽:ニコライ・チモフェーエフ
  ドミートリー・ショスタコーヴィチ
●レニングラード・ラジオ局からショスタコーヴィッチの交響曲3番「メーデー」の最終楽章が放送される。それを聴くウクライナのドンバスから社会主義革命のレーニンの五カ年計画の3年目の闘争が声を上げる。それは都市部から農村部のコルホーズまで響き渡り、社会主義の理想が拡がるのだった。
■ウクライナでのソビエト政権を磐石なものにするために、ソ連政府・共産党はウクライナ化政策を実施、その中でジガ・ヴェルトフがウクライナで製作したトーキー・ドキュメンタリーの傑作。
旧ソ連に統合されたウクライナにはキエフにウクライナ・フィルムが設立された。そこはウクライナの巨匠アレクサンドル(オレクサンドル)・ドブジェンコを記念して後にドヴジェンコ・スタジオとも呼ばれるが、そのウクライナ・フィルムで製作された初期のトーキー作品が「熱狂 ドンバス交響楽」。
監督は「カメラを持った男」で知られるジガ・ヴェルトフ。
ヴェルトフは本名デニス・アルカジェヴィチ・カウフマンで、ロシア領だったユダヤ系ポーランド人。
革命後のソ連でニュース映画を撮影するが、ロシア・アヴァンギャルドの影響も強く。独自の編集スタイルを確立
「カメラを持った男」はその集大成であったが、
イタリアの未来派の影響もあって、ノイズ音響を多用したトーキーの第1作が「熱狂ードンバス交響楽」である。
ウクライナにはこの時期に既にソ連下でも反ロシア的な動きは
あったがここではソ連に貢献するウクライナしか描かれることはない。ドンバスは工業地帯でそので製造されたトラクターを使って肥沃なウクライナの小麦畑で農産量を上げるというレーニンの五か年計画にのっとったプロパガンダが叫ばれるのだった。
レニングラードのラジオから流れるショスタコヴィッチの交響曲3番そしてまずは、ロシア正教会の締め出し、ボリシェビキによるアンチ・宗教革命が叫ばれ、やがて社会主義革命はウクライナの農村部まで拡がる。
1918年にロシア革命が起こり、ロシアはソビエト連邦になります。
ウクライナでは民族主義者を中心に抵抗運動も起こりますが、結局ウクライナもソビエト連邦に入るんですね。
レーニンが死にスターリンの時代が始まると、ソ連における第一次五カ年計画において、コルホーズ(集団農場)による農業の集団化、富農の撲滅運動、また反国家分子を強制収容所に収容、さらに穀物の強制徴発などを原因として発生し「富農」と認定されたウクライナ農民たちはソ連政府による強制移住により家畜や農地を奪われ、「富農」と認定されなくとも、少ない食料や種子にいたるまで強制的に収奪された結果、大規模な飢饉が発生し、330万人から数百万人ともされる餓死者・犠牲者を出したとのこと。この映画はそんな裏があります。
もちろんこれはソ連映画ですからそんな部分は描かれません。ロシア正教の撲滅と、社会主義を実現に前進する人々だけを描きます。集団農場というのは要するに農業の機械化ですね。最初はドンバス地方では産業革命時に石炭の炭鉱が開発されたので、石炭埋蔵量最大のドネツ川沿いの地という意味で〝ドンバス〟となったようです。
ドンバスの石炭で鉄工所でトラクターを量産します。映画の前半は宗教を倒して、若い労働者が社会主義の実現のために炭鉱から石炭を掘り出し、それを鉄工所の職人たちが鉄を精製して、トラクターを作ります。後半はそのトラクターを使って集団農場で小麦を刈り入れるんですね。ウクライナの農夫たちは歌いながら、小麦を刈り入れます。
しかしこの映画の2年後の1932年には〝ホロドモール〟が起こります。ウクライナ人が住んでいた各地域でおきた人工的な大飢饉ですね。330万人から数百万人ともされる餓死者・犠牲者を出すんですね。
ジガ・ヴェルトフの優れたトーキー映画ですが、今見るとやはり複雑ですね。
この映画で歌っているウクライナの農夫たちもこの2年後には餓死した可能性がありますね。
映画は恐ろしい歴史の記録ですね
またヴェルフもこの後、スターリンに形式主義者だと批判されて、独自の映画製作の機会を奪われ、晩年はスターリンによる反ユダヤ政策の影響でニュース映画の編集に従事させられたんですね。
河

河の感想・評価

4.6
レーニンのなんかしらの祝いとして、五か年計画下での工業的な発展の過程を撮った映画
宗教建築物が破壊されてソ連の旗が建つところの背景に映る黒煙を上げる工場、人や鐘の動きに合わせてグラングラン揺れるカメラ、傾いた画面に影のように映る人々っていう冒頭の不穏さからその発展に対して否定的なことがわかる
鉄道が通り採掘も進んでって時間が流れる中で、労働者が全員同じ動きで規則的に動いていく様子が軍隊の規則的な行進、工場や鉄道と重ね合わされる その後の仕事終わりのようなシーンでのダンスすら歯車によって動かされてるような人工的なものに見えたり、人々が段々と工場の部品の一部のようになっていくところがモンタージュによって示されていく
その映像に汽笛や工業音や音楽がバッキバキに割れたインダストリアルな音像で切り貼りループされていて、それと映像が組み合わさることで、映る人工的なものが何か全て一つの生き物として蠢いているように見える 工業化っていう大きな流れによって人々がその一部として非人間的になっていく過程を見せられたような感覚があった

その工場の中で熱された鉄が白黒なのと光の加減もあって痛いくらいの白さで光る物体と化していて、全体的に異様な中でも際立って異様だった 他の映画でもあるように、この物質的で刺すような光が原子力のメタファーになってたりするんだろうか

こういう全てがカメラを持った男と同じく現実にあるものを撮ったもので構成されているっていうところ、現実のものを組み合わせてより大きなモチーフを浮かび上がらせるところがキノプラウダってことなのかなあと思った

初トーキーらしく、カメラを持った男にモンタージュの対象として映像だけじゃなく音も使い始めて、さらにその音自体も加工したもしくは意図的に割っているって感じで前作との連続性がある カメラを持った男にもあった光や規則的に動くものへの明らかなフェチズムも引き続きある

おそらく汽笛だろう音がループするところがめちゃくちゃに好きで、あとダンスの時繰り返しのタイミングで一瞬音が切れる時のあの糸が一瞬切れたような感じもめちゃくちゃに良かった

熱狂 (ドンバス交響楽) 直訳のはずなのに一気に語感がダサくなってる
eddiecoyle

eddiecoyleの感想・評価

3.3
ジガ・ヴェルトフ初トーキー。フィルム上映のおかげか、音割れ寸前ノイズインダストリアルのサウンドモンタージュで『ポーラX』後半の斜め上をいってて最高だった。
ニュースを聴くひと
教会が割れるところ、見てる人の中には嬉しそうじゃない人もいた。階級闘争による破壊の映像は見ていてぞくぞくするからもっと見たい。文革のとき国宝級の仏像がゴンゴン燃やされる映像を観たときから虜になってしまった。燃える名古屋城の写真を見たときはアメリカ憎しと思ったけど、そういう貴重なものが壊されてゆく、恐るべき浪費じたいには痺れる
ron

ronの感想・評価

3.5
フランスのpoetic realismといいロシアのkinoksといいプロレタリアンなものすきっぽい自分

あなたにおすすめの記事