私は隠れてしまいたかったの作品情報・感想・評価

「私は隠れてしまいたかった」に投稿された感想・評価

イタリア映画祭2021の10本目。
画家アントニオ・リガブエの数奇な生涯を辿る。
この人を全然知らなかったが、ベルトルッチ『暗殺のオペラ』のタイトルバックでも使われている虎などの力強い絵が印象的。

幼少期から虐げられ、大人になっても周囲から拒絶され、精神が病む日々。孤独で強迫的に絵を描く生活をするも、始めは誰にも見向きもされず作品を破壊。
リガブエは頑なに“芸術家”を名乗るのが芸術家っぽいなあと。一見変わり者だけど繊細な人だ。

自分自身を隠してしまいたいほどなのに、結局“愛”が連れ出してくれる。見えている世界が変わっていく感覚。人々から歓迎されている感覚。
普遍的ではないけれど、映像美も相まって綺麗なラストだった。
実は一番観たかった作品なのに配信最終日間近の最後になってしまった。リガブーエが乗り移ったかのようなエリオ・ジェルマーノの演技はもちろん素晴らしいが、なによりリガブーエを中心に置いた引きの映像の美しさが際立っていた。
あと時々、覗き穴レンズから見ているような、画面の両端がぼやけている映像が意図的に挟まっていて、リガブーエの行動をこちらが覗いているような気分になってくる。「暗殺のオペラ」の冒頭で使用された絵だったのか、確かにあの絵はインパクトがあった。
その実の家族との離別理由など、かなり特異な環境から、ほぼ放浪状態でいた時代を経て、自分の絵が評価されその対価として自由になる金銭を受け取るようになってから、リガブーエが言う言葉、彼が口にする度苦しい感じがした。

リガブーエを演じたエリオは特殊メイクなのだけれど、目がちゃんとエリオなのでメイクの下にエリオを見ることができてよかったです。
birichina

birichinaの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

やや長尺だった感はあるが、期待通りの映像美とエリオ・ジェルマーノの怪演が楽しめた。老け顔を作る特殊メイクがよくできていた。

この主人公のように、幼い頃に一番信頼している人(主人公の場合、養母:実母と兄弟は食中毒で死亡、新聞には父親が殺した説も)に「お前の頭には悪魔が棲んでいる」と言われ続けたら、誰でもおかしくなると思った。
養父母や学校の同級生など、周囲がみな主人公に冷たくあたる。虐げられ続けた幼少期の体験が主人公の性格を頑なにしていったように思った。もし優しかった実母が生きていたら、あるいは養母がもっと彼を理解していたら、学校か病院に包容力のある先生が一人でもいたら、生まれながら異質な面があっても、もっと社会になじめて幸せな人生を送れただろうに、運が悪かったんだなと思う。
主人公の顔が、少年時代はピュアな表情なのに年を重ねるごとに意固地な人相になっていくように感じた。幼い頃や若い頃は親身になってくれる人が周りにいないのがかわいそうだったが(せっかく知り合った優しいシニョーラはローマに引っ越してしまう)、画家や彫刻家として身を立ててからは、やたらと自分は芸術家だと言い、芸術家であることにアイデンティティーを見出そうとしているところが哀れだった。
心を寄せるレストランの娘は主人公のことを嫌ってはいない、というかまんざらではないように見えたが、娘の母親がしっかりガードしていて恋が実らず、、、新婚生活用の家まで準備していたのにかわいそう。。

スイカの屋台、テーブル席も用意してあって面白かった。20Lと書いてあったが、どのくらいの貨幣価値なのだろう? 誘惑女優の手に落ちなかったのはmeno male!

脳梗塞(?)で右手がマヒして、結婚の夢も叶わず絶望のどん底だが、最期にあんなふうに優しいお母さんが迎えに来て「Andiamo(行きましょ)」と天国にいざなってくれたのが救いだ。

この画家の絵はあまり好きになれなかったが、エンドロール直前のモンシロチョウの絵はよかった。自分へのご褒美に蝶を描くと言っていたので、気に入った作品に加筆したのだろうか。ゴッホに似た画家と言われているらしいが、ゴッホには弟のテオという理解者がいたから、まだよかったかも。
sugim

sugimの感想・評価

3.6
想起された瞬間の断片を陽光でつなぎ合わせような感触。美しい。
オンライン配信を購入して鑑賞したけれどスクリーン映えしただろうな……。
eigajikou

eigajikouの感想・評価

4.3
エリオ・ジェルマーノがベルリン&ドナテッロ賞で主演男優賞受賞「※エリオ・ジェルマーノ警報映画」
『暗殺のオペラ』冒頭で使われた一度見たら忘れられない動物たちを描いたリガブエの数奇な人生ドラマに吸い込まれた。
コレは本当にスクリーンで見たかった😿
街並みと自然の風景がとても綺麗。自分にはわからなかったが、教授によれば言語の違いに着目すると面白いとのこと。彫刻作品を抱えて殺風景な一本道を歩いていくシーンが印象的。画家の一生とはまさにそのようなものではないか。
上旬

上旬の感想・評価

3.6
【第70回ベルリン映画祭 男優賞】
これはスクリーンで観たかったな、というかスクリーンで観ないと正当な評価ができないタイプの作品だと思う。

話としてはアントニオ・リガブエという画家の生涯を描くだけなのだが、とにかく画面が美しい。一つ一つのカットが本当に絵のよう。

タッチとしてはゴッホをウィレム・デフォー主演で描いた『永遠の門 ゴッホの見た未来』に近いかも。

彼の内面やトラウマを徹底してグラフィカルに描き出す手腕は大したもの。万人におすすめはできないけど大切にしまっておきたいような、そんな映画。
[ある画家の生涯] 60点

生まれ育ったスイスでもルーツのあるイタリアでも拒絶されながら、内なる時間を生きる画家アントニオ・リガブエ。その摩訶不思議な絵画世界の色彩を再現したかのようなセットの色彩が素晴らしい。頻繁に登場する彼を突き放すようなショットも、その表現が許容できるかはさておいて美しい。特に前半30分は目まぐるしく切り替わる時間軸から、イタリアに流れ着いた彼の前半生を、『響きと怒り』の第一章をそのまま映画化したかのようあ流麗さで綴っている。ただ、中盤以降はずっと絵面が同じだったので『永遠の門』の劣化版という印象しか受けず、爆睡しては巻き戻してを繰り返していた。演技も凄いってだけで特段印象に残らない。覚えてる限りでは、ベルリンってよりもヴェネツィアっぽいが、どっかに社会批評的な何かがあったのかもしれない。

書く気力すら湧かなかった『悪の寓話』も含めて、昨年のベルリン映画祭コンペはあと一本のとこまで来たが、『Never Rarely Sometimes Always』(邦題が嫌いなので原題で)と『DAU. ナターシャ』くらいしか収穫がなかった。
画家アントニオ・リガブエの波瀾万丈の物語だった。
エリオ・ジェルマーノはこの役でベルリンで主演男優賞とったんだね。

イタリア移民としてスイスで生まれ、身体的にも内面的にも障害を持っていながらも絵を描くことだけは諦めずに情熱を注いできたらしいが、その人生は想像以上にいろいろありすぎる。

アントニオの障害を理解できない親、家族の悲劇とその真相、スイスからの追放と直面するイタリア語の壁…。それだけにとどまらず。

よくもまあここまできたな…というのが正直な感想。

あらゆる邪念から解放されるのが美しい景色に触れている時だったり絵を描いている時だったり。

彼なりに必死に生きているにもかかわらず、心身共に障害を抱えていると「普通ではない」「病気」と思われ病院に入れられる。病院も人の病を治療する意義ある施設だとは思うが、本人の意思に反して入れられる場合は…?

何事もない社会からどこか隠されるような存在しされているようにも見えるし、本人にしてみれば辛い世の中から隠れてしまいたい、タイトルはそんなことを感じさせる。

不安と苦痛に満ちた人生に見えてしまったが、芸術を語り製作している時だけが自分の存在を実感できたんだろうな。
Yui

Yuiの感想・評価

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空と湖と森のシーン、その光と色と、何もかもが綺麗だった 画家自身が自分の絵を壊すシーンは見てられないほど辛いな

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