ムーンライティングの作品情報・感想・評価

ムーンライティング1982年製作の映画)

Moonlighting

製作国:

上映時間:97分

4.0

「ムーンライティング」に投稿された感想・評価

最初から最後まで全く陽の当たらない映画だった。画面の暗さとストーリーのシンプル(単純)さが、さらに作品の雰囲気を重くする。意図的かどうかはわからないけど、ノヴァク(主人公)の置かれている状況の酷さに途中から少し笑えてきた。しかしそれも映画全体の暗さと比べれば些細なもので、最後まで何かが改善されるわけではない。なぜかノヴァクに自分を重ねてしまって、最後まで暗い気持ちで鑑賞した。インパクトがあるわけではないけど、お腹の下の方にズシッとくる映画。
堊

堊の感想・評価

3.9
カンヌで上映された際に『月光を浴びろ』と誤訳されたせいで『moon lighting』なる題がつき仏では『Travail au noir』と呼ばれ、日本で正式な題があるとすれば『ブラック労働』なるであろう本作は題にまつわるその歪な経緯に反して監督であるスコリモフスキ自身は「久しぶりに個人的な映画を作ることができた」などと満足げな様子である。“個人的”とは本作の何を指しているのだろうか。例えばまず思い浮かぶのはショーウインドウに立つ女性の店員が主人公ノヴァクの眼にはすべてアンナのように映る場面だ。とりわけ『早春』で明確化した主人公の異性に対する執着を思い出させる。異性との感情的な食い違いに懊悩する男性像というモチーフはもはやスコリモフスキ作品の代名詞であるかのように頻出する。『アンナと過ごした四日間』や『早春』ではそれが前景化し全編を包皮のように優しく覆う形で作られていたことは誰の目にも明らかだったし、『ザ・シャウト』でのノイズミュージシャンが突然の訪問者に妻を奪われたあとに妻への執着から狭い室内を右往左往していたさまも思い浮かぶ。過去作との関連で言えば思わず笑ってしまうようなリフォーム作業中の高所でのバナシャクの感電はチャップリンではなく彼が何度もモチーフにしているキートンであり『アンナ』を見たあとならば主人公のあっけなく惨めな転倒を、水浸しになった床の上で感電を防ぐために電球を割るノヴァクの姿には『早春』の雪を溶かすためのランプのもとに集う二人とその揺れを思い起こさずにはいられないだろう。ノヴァクが締め出された雪のなか白いを吐きながらガラクタとともに公園のベンチに横たわるとき、私たちは彼がそのベンチを愛おしそうに撫でることを既に知っている。そしてそのシーンの前には神父に向かっての告白がこのように挟み込まれている。
「もう神は信じていない。あいつらを選んだのは彼らが愚かだから。連中をコントロールできると思ったんですが、無理です。わたしは彼らより弱い」
ここまで来ると家のリフォームなど単なる映画作りのメタファーにすぎないことは明らかだ。本作が映画作りを語るどうしようもなく赤裸々な彼自身の映画に見えてたまらないのだ。
DK

DKの感想・評価

4.5
スコリモフスキ、引き出しが多すぎてもう…
飲み物?スープ?を律儀に均等に分けるシーン、共産主義国の人らしさが出てて好きです。
詳しい事は何も知らされずに社長に海外まで飛ばされて違法リフォームさせられるどうしようもない(実はごく一般な?)人間たちの滑稽さと与えられたお金だけでやりくりするために犯す必要悪の代償として膨らんでくる緊張感の共存、そのバランスの変化を見てるだけでも面白い。
作業員たちも最初はその鬱憤を古くなった部屋を破壊する事で紛らわせてたけど精密作業になっていくと行き場を失ったそれがあからさまに態度や行動に現れはじめ、改築自体はなんとかやり遂げたがそっからのラストもクール。
スコリモフスキはやっぱ音でハラハラさせたり煽ってくる。
不法就労者が家のリフォームして、予算がつきそうになると万引きかますってだけの映画なんだけど、クソ面白い。万引きのシーンのスリル。
こどもの遊びの延長のような感覚があるし。

あと、子分たちの動きが面白い。
寝袋履いたままぴょんぴょん飛んでくるの笑える。感電するシーンも、申し訳ないけど笑えるし。
なんだろう、この緊張感あるようでない感じはw ちょー独特だお!

妻の写真が動き出すシーンは、『ラ・ジュテ』のような鮮烈さがあったよー。
ラストカットもすげー。放置されたショッピングカートが流れていくのだが、轟音! リフォームの映画だけあって音が轟音だよね。っていうか、スコリモの映画は音が特徴的だよね。

どーでもいーけど、レゲエ好きとしてはブラック・ウフルのポスターが出てきたのは見逃さなかった。まぁ、どうでもいいですねはい。
マ

マの感想・評価

3.7
万引きとリフォームの繰り返しで、万引きしながらエロい事考えて悶々としてる主人公がやばい。目つきがおかしくなってくのが面白い。
観終わって考えてみると笑えるけど、ポーランドとイギリスが断絶して追い詰められて不安になってくのがなかなか恐ろしくて、帰る場所を失うとこうも人は判断力を失うのかと考えさせられた。
「ムーンライティング」は副業とかバイトって意味らしい。
芥川

芥川の感想・評価

4.5
とにかく壊して、盗んで…
笑えるけど、同時に不安や絶望がそこはかとなく漂っていて、ざわざわとした感覚が常に拭えない。雑然とした映画
ラストが秀逸
菩薩

菩薩の感想・評価

4.1
スコリモフスキらしい独特のユーモア。ストーリーの陰でくすりと笑える瞬間的な描写が実に面白い。ワルシャワからロンドンへ渡ってきた不法労働者達を描いた作品。英語が話せるノヴァクをリーダーに、なんとか彼が他の3人をまとめようと奮闘するものの、本国では「連帯」のワルシャワ蜂起による戒厳令で連絡付かず、それをひた隠しにするためのリーダーの孤軍奮闘の努力が涙ぐましい。あんな露骨な万引きがなぜばれないかは不思議だけど、まぁでも面白いしスリリング。後半の展開は、四人の関係性に本国の状況を重ね合わせたかの様な趣に。当然不法労働だから応援するのは間違いなのだろうが、一日18時間、クリスマスも新年もささっと済まし、ひたすら働き詰める彼らの姿に、日頃の日本社会のマゾヒズムな労働環境を重ねずにはいられず…。でも結局、こんなスコリモフスキは笑うしかない。日頃ストレスを抱えてる方には結構オススメかも。ラストカット、終わり方が秀逸。おそらくはワイダの『ワレサ 連帯の男』と併せて観ると尚良しかと。ポーランド映画祭も始まった事だし、きっと今がチャンス。
たてぃ

たてぃの感想・評価

4.4
す、すごい…共産主義国家だった当時のポーランド情勢をたった4人の不法労働者間での出来事で表現している…ブラックコメディを交えて…いかにもスコリモフスキ監督らしい作品でした…

1981年12月、ロンドンにある別邸のリフォームをやるよう社長から命令されポーランドから観光ビザで向かう主人公と職人の3人。期間は約1カ月。英語を話せるのは主人公のみ。従って、外部からの情報は主人公しか入らない。また財布(1200ポンド)も主人公が握っているため、職人3人は主人公に言われるがままにただただ働くのみで食料も主人公が買ってくる…これぞ共産主義国家下での配給制…しかし、予算の不足が徐々に浮き彫りとなり、主人公はある行動を始める…しかも、祖国ポーランドでは戒厳令が敷かれ電話回線が遮断されたため社長や家族と連絡が取れない状況に…

まさに、主人公=ポーランド政府、職人3人=共産主義国家下の労働者、社長=ソ連(&近隣住民=西側諸国)という縮図…そして当時のポーランドはまさに労働者の怒りが爆発しゼネスト、対する政府は戒厳令…そしてポーランドの未来を予見したかのような作品の終盤…でも、ポーランドの歴史を知らなくても十分面白いですw

ちなみに、1980年代前半のポーランド情勢については「ワレサ 連帯の男」でも描かれていました。それを見たおかげでこの作品にも入りやすかったです。

《補足》
・予告編(字幕なし)
https://m.youtube.com/watch?v=qgRO15muX78

・当作品については、マーメイドフィルムさんの映画配信サイトで鑑賞しました。他にも観たい作品があるので今後も利用したいと思います。(一本あたり350円)

http://beautiesweb.com
h

hの感想・評価

4.0
自国のクリスマスソングを歌いぶつけあう子供と、不法労働者。または、服屋に妻の写真を貼ってもらおうと店員に頼み、断られる男。鬱屈とした性欲。それとは全く関係ないところで露わになり、無視される乳房。爆発する電球。人ごと倒される脚立。叩き割られるテレビ。ぼんやりした人への不安・嫌悪・倦怠感とは関係ない奇妙なところで出てくる荒々しさ。不法投棄物を投げ棄てるという行為がバスケットボールになり、万引き犯逮捕の瞬間はサンドイッチに疎外される。全てが唐突。詩としては最高であり、映像の作りは(わざと)雑になっている。
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