『Z』に投稿された感想・評価

Z

架空の国が舞台
国民の自由を主張する政治家が、集会の最中に事故?に遭い亡くなる。
この事件は事故として処理されそうになるのだが、予審判事が調べていくと次々と新たな事実が出てくるのだが…

痛快な政治作品でした。
最後のどんでん返しを含めて印象に残る作品
証言を得ようと巧みなリードをしている予審判事がカッコイイ。
軍や警察の腐敗っぷりがスゴい。
これは、ギリシャでの出来事を踏まえて作られた作品らしいですね。改めてファシズムは厄介だと感じさせられた…
緑雨

緑雨の感想・評価

3.8
娯楽作品としてもじゅうぶん楽しめるが、当時の時代感覚を反映しているという点からも興味深い。銃でも刃物でもなく、殺戮の道具はあくまで棍棒。およそ人が人を殺す手段として、棍棒による撲殺ほど惨たらしいものはないんじゃないだろうか。

この映画、オープニングとラストが秀逸。

葡萄の病害対策の話から入って、何じゃこりゃと思ってるうちにそれが政府による思想統制のメタファーだと分かる。この展開でぐっと話に引き込まれる。

ラストのドキュメンタリー番組風の後日談解説にしても、敢えて皮肉っぽくまとめることで、虚しさと空恐ろしさが余韻として残る。
Masa

Masaの感想・評価

4.1
音楽が凄い良くてオシャレで荒々しい
当時の映画らしい演出とかアクションとかがあってニューシネマ的な空気感
コスタガブラスの作品がやっと見られた
意外と癖の強いわかりやすい演出もするんだけどテンポとかノリも良く楽しめる
主演が入れ替わっていくので視点もどんどん変わるんだけどもう少しドキドキ感が欲しかった
しかしこの時代にここまで祖国の不正や闇を暴いた作品もそうないのかと思います
そもそもポリティカルサスペンスがあんまりノレないのかもしれない
森達也さんが本作のタイトルを挙げていて興味を持って鑑賞。1963年にギリシャで起きた、軍事政権による革新派議員の暗殺事件を元に映画化。ギリシャ人亡命者のコスタ・カヴラス監督作品。

硬い政治ドラマと想像していたら全くそんなことはなく、硬軟取り合わせたサスペンスタッチで最後までとても面白かった。移動カメラの多用と矢継ぎ早の編集でリアリティーもあった。たくさんの勲章を下げた軍上層部たちが次々と告訴されていく様、そして衝撃的なラストは否が応でも反体制の血を燃えさせる。1969年当時のクリエイターの熱が伝わってくるようだった。

「新聞記者」シリーズは本作の影響を受けているが、ちょっと比べ物にならないぐらい本作は優れていた。

※暗殺された議員と妻の回想で不倫を匂わせるような描写があり(その後の妻の不審な態度も含めて)どういうことだったのか回収されていなかったと思う。映画パンフを発注したので後述する。

※1969年のカンヌは本作が審査員賞、グランプリが「if もしも…」、初監督作品賞が「イージー・ライダー」
mh

mhの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ギリシャで起こった政治家の暗殺を題材にしたポリティカルサスペンス。
コスタガヴラスの出世作にして最高傑作というので、ハードル上げまくりで見たんだけど、そのハードルの二倍すごい。
荒削りなカット代わりと、ハイテンポな展開が独特なリズムを刻んでる。
急に過去回想に突入するけど話はわかりやすい。
徐々に真相に近づいていくのが気持ちいい。
予審判事のジャン=ルイ・トランティニャンかっこいいにゃん。「暗殺じゃなく事故です」といちいち訂正してた判事が、いつの間にか「暗殺」と口にしてて、それを速記者に確認されるのめちゃかっけー。
本編はあくまでスカッと爽やかな勧善懲悪エンターテイメントなんだけど、スライドベースの後日談で、気持ちいいくらいにひっくり返してくれる。
ギリシャって、テオアゲロプロスのイメージしかなくて共産党支配だと思い込んでたんだけど、軍事政権の独裁だったのか。えじゃあテオアゲロプロスのあの作風なんなん?(この映画には関係ないこと)
なんでこんな面白い映画が視聴困難になってんだろうな。
いやーすごかった!
一人旅

一人旅の感想・評価

5.0
第42回アカデミー賞外国語映画賞。
コスタ・ガヴラス監督作。

舞台は地中海に面した某国。左派の政治家Z氏(イヴ・モンタン)は自由を求めた集会を開催。しかし、集会は反対勢力により妨害され、Z氏は暴漢の一人に殺害される。警察及び軍は事故死と決めつけるが、予審判事は疑問を抱き独自に捜査を開始する・・・。

某国という設定だが、実際には製作当時軍事政権下にあるギリシャ(監督の母国)政治の実態を描いた作品だ。
映画の展開としては地味だが、予審判事の緻密な捜査によって少しずつ事件の核心へと近付いていく様に緊張感が絶えない。

警察、軍、さらには国王支持の実行部隊・・・全てが敵だ。恐ろしいのは敵の姿が見えないところだ。実行部隊の面々も普段の生活は至って普通、平凡だ。どう見てもその辺にいる善良な一般ピープルだ。予審判事の捜査によって証言者を確保できたしても、背後に存在する巨大な力が働いて抹殺されてしまう。軍の上層部の人間が続発する事件に関わっているのは明白だ。しかし、人間というより、何か幽霊のような、実体の掴めない未知の敵と戦っているような印象を受ける。心底不気味だ。
軍の圧力や陰謀によって個人の自由が潰されるという恐怖。軍を相手にしたら一個人なんて無力だ。何もできやしない。

ラストシーンはギリシャの政治史そのものだ。
政府の崩壊、その後のクーデターによる軍事政権の誕生までの過程が淡々と語られていく。そこには感情は一切ない。ただ淡々と事実が語られていく様は軍事政権の非人間的な冷たさを象徴しているようだった。
ukigumo09

ukigumo09の感想・評価

4.0
1969年のコスタ=ガヴラス監督作品。ギリシャ出身の彼は若いころ父親の政治的な立場などが影響し、パリへ移り住むことになる。ソルボンヌ大学では文学を専攻していたが、しばしばシネマテークへ通い、映画を観ていた。その時特に感銘を受けた作品はエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督『グリード(1924)』で、映画における深刻さはここで発見したようだ。その後映画を学ぶために高等映画学院(IDHEC)に入学する。彼はジャック・ドゥミやアンリ・ヴェルヌイユ、ルネ・クレマンなどの作品の助監督をして修行をするのだが、ルネ・クレマン『Le Jour et l’Heure(1963)』の助監督をしていたときにイヴ・モンタンと出会い、仲良くなったようだ。その後コスタ=ガヴラスが『七人目に賭ける男(1965)』で長編監督デビューする際、イヴ・モンタンは殺人事件の謎を解く刑事として主演している。
コスタ=ガヴラスは1967年にヴァシリ・ヴァシリコスの小説『Z』を読み、即座に映画化を決意した。難航していた脚本作りはスペイン人のホルヘ・センプルンに協力してもらいコスタ=ガヴラスと共同で書き上げた。原作自体が1963年のギリシャ軍事独裁政権下で起きた左翼政治家グリゴリウス・ランブラキス暗殺事件を基にしているため、制作資金を集めるのもまた難航した。この作品を作る意義に同調した役者たちは利益が出るまではノーギャラという破格の契約で出演したようだ。『七人目に賭ける男』に出演していたジャック・ぺランは本作では出演だけでなくプロデューサーとしてもクレジットされている。ぺランが奔走してアルジェリアのハーメッド・ラチェディというプロデューサーの協力をとりつけたおかげで制作することができたのだ。本作の制作国がフランスとアルジェリアの共同制作となっているのもそういったいきさつからである。 

地中海に近い某国、軍事独裁体制に反対する勢力も大きくなっていた。その指導者はZ氏(イヴ・モンタン)という正義の男で、町で開かれる集会で演説をする予定だった。様々な妨害があり場所を変えるなど対処していたものの、Z氏は暴漢に襲われて死んでしまう。警察は頭の傷は自動車事故でできたものであると発表し、予備判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)も事故死として判定しようとする。しかしZ氏の友人たちの訴えにより、予備判事は本格的に調査を開始する。検視の結果頭部の2度の打撲が致命傷と判明する。新聞記者(ジャック・ぺラン)の協力を得て、Z氏に接近した三輪自動車の目撃情報を集めると、やはりこの車に乗っていた人物がこん棒で殴っていたのだった。捜査を進めると殴った男やその仲間は警察と繋がりがあると判明する。政治的な力が働いた計画的な殺人であると突き止めた予備判事は警察組織の幹部7人の告訴に踏み切る。

本作は正義が最後に勝ちそうなところまで行きながら、強大な権力に跳ね返され、結果として弾圧や支配は強化されてしまう。しかし真実を求めて戦う予備判事やマスコミの勇気ある行動には胸が熱くなる。『Z』というタイトルはギリシャ語の「Ζει」に由来し、「彼(ランブラキス)は生きている」を意味する政治的抗議のスローガンである。こういった政治問題を扱った作品でもサスペンスフルに描くことで、ある種の娯楽性も生まれ、観やすいものになっている。コスタ=ガヴラス監督はこの路線で『告白(1969)』や『戒厳令(1973)』も撮っており、いずれも力強い作品で必見である。
kuu

kuuの感想・評価

3.8
『Z』
原題 Z.
製作年 1969年。上映時間 127分。

ギリシャで実際にあった革新政党の政治家暗殺事件をモデルにしたヴァシリ・ヴァシリコスの小説の映画化フランス・アルジェリア合作。
製作担当はジャック・ペランとハーメッド・ラチェディの二人。
監督は『七人目にかける男』のコスタ・ガブラス、脚本は『戦争は終った』のホルヘ・センプランとコスタ・ガブラスの共作。
撮影は『中国女』のラウール・クタール、音楽は『その男ゾルバ』のミキス・テオドラキスがそれぞれ担当。
錚々たるメンバーやなぁ。
出演はイヴ・モンタン、イレーネ・パパス、ジャン・ルイ・トランティニャン、ジャック・ペラン、ほかには、レナート・サルヴァトーリ、ジョルジュ・ジェレ、ジャン・ピエール・ミケル、ベルナール・フレッソン、ジャン・ブイーズ、シャルル・デネール、マルセル・ボズフィなど。

地中海に面した架空の国。
反政府運動のリーダー、
Z (イヴ・モンタン)は、 政府から監視、圧力を受けている。
ある日、集会での演説の後、何者かに襲われ、命を落とす。
Zの仲間たちの証言から、殺人らしいことが分かってくる。
やがて、証人たちが行方不明に。。。

『なぜ我々の思想を暴力で封じるのか。それは我々の運動が、人民の側に立ち、権力と対立するからだ。』

実際にあったギリシャの左翼政治家の暗殺事件に基づいた本作品は(※詳しくは末筆に記載しときます。)、権力による弾圧に対して、鋭く抗議する映画を撮り続けるギリシャのコスタ・ガヴラス監督の傑作て云えるんかな。
ミステリー・タッチの語り口が巧みでした。
まず、反政府運動のリーダーであるZ の死を、権力側は、事故死として処理しようとする。
判事(ジャン・ルイ・トランティニャン)もまた、やむを得ず訴訟を取り下げようとする。

Zの友人たちが、調査に乗り出し、Zの 遺体には殴られた跡があり、事故ではないこと、集会は、当初、予定していた場所が、直前に変更されていたことなどが明らかになる。
チョイとケネディ暗殺を思い出した。
国家の犯罪を暴こうとする判事は、新聞 記者 (ジャック・ベラン)の協力を得て、調査を続けていく。
やがて、これは、計画的な組織による殺人ということが分かってくる。
判事は警察組織の関係者を告訴しようとするも、タイミングを合わせたかの ように、証人たちは行方不明に。
憲兵隊長たちは告訴されるが、これで映画は終わらない。
裁判の結果がテレビで報告される。
事件に関係した証人たちは、事故や事故死であるということになり、憲兵隊長たちは不問に。
そして、ストライキだけでなく、ミニ・ スカート、ロン毛、ポピュラー音楽までもが禁止となる。
権力の思想統制は、さらにエスカレートしていくことに。
政治色の濃い映画なんやけど、Zの死因を探りあてるくだりやら、権力側のでっちあげが、ひとつひとつ嘘であることが分かる調査のプロセスは、サスペンスたっぷりあり、まるで上質のミステリーのようで、エンタメとしてもじゅうぶん楽しめました。 

映画の一番最後に、メッセージが今作品のタイトルを秘めてるのかな。
"Also the military regime banned (...) the letter "Z" which means "He is alive" in ancient Greek."
"また軍事政権は、古代ギリシャ語で『彼は生きている』を意味する『Z』の文字を禁止した。"


ギリシャの民主的政治家グリゴリス・ラムラキスが暗殺された事件を題材にしている。
1963年5月22日、ラムラキスはテッサロニキで反戦演説をした後、右翼過激派に襲われ頭部を殴られた(映画で描かれているのと同じ方法)。
1963年5月27日、この襲撃による脳損傷で死亡した。ラムラキス暗殺後、1967年、右翼将軍による軍事政権がギリシャ政府を掌握した。
この間、ギリシャの都市では、ラムラキスと彼の民主主義的理想を偲んで、『Z』(『彼は生きている』の意)の文字が抗議の落書きとしてよく使われるようになった。
軍事政権は、こうした抗議行動に対して、『Z』の文字を落書きとして使用することを禁止した。
1974年、トルコによるキプロス侵攻(トルコ軍にキプロスのほぼ半分を占領される)という惨事を受けてギリシャ軍政は崩壊し、ギリシャに民主主義がよみがえる。
映画やと、ジャン=ルイ・トランティニャン演じる「試験判事」が、実際には後にギリシャ共和国大統領(1985~1990年)を務めたクリストス・サルセタキス。
今ではローマやパラサイト、そして今度のドライブマイカーといった例があって然程珍しくもなくなった感はあるけど、1969年当時は珍しかった(確か1938年の大いなる幻影以来31年ぶり)英語圏以外でのアカデミー賞作品賞候補作。

フランスとギリシャを混ぜた架空の国における政治サスペンスで、暴力的な右翼にドン引く描写が多々ありつつも程良くリアリズムを追求したスピーディーな演出のおかげでかなりハラハラしながら鑑賞できる力作。

しかしこれだけ重々しくもスリリングで面白い作品が配信もDVDレンタルもされておらず、日本では限られた方法(ちなみに自分の場合はVHSを貸し出していた図書館を見つけて借りた)でしか鑑賞できないっていうのは甚だ不可解で由々しき事態だと思う。
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