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黒い司法 0%からの奇跡のYYamadaのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
4.0
【法廷映画のススメ】
『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)
〈実話 (1988-1993年 / アラバマ州) 〉

◆法廷の争点
・白人女性の殺人事件に対する、
 黒人死刑囚の冤罪の証明

〈見処〉
①死刑囚の1/10が誤認。
 現在も続くアメリカの闇を描く
・『黒い司法 0%からの奇跡』(原題「Just Mercy」=「公正な慈悲」)は2019年に製作されたノンフィクション映画。
・本作の舞台は1988年、アメリカ南部のアラバマ州。検察側の誘導尋問などにて、白人女性の殺人事件の犯人に仕立て上げられたウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)は、死刑判決を受けた。
・同じ頃、アラバマ州モンゴメリーにて、不当に逮捕・収監された人々に法的支援を提供する非営利団体「イコール・ジャスティス・イニシアチブ(EJI)」を立ち上げた若き弁護士のブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)とその友人のエバ・アンスリー(ブリー・ラーソン)は、ウォルターの無実の証明のため、彼の弁護を買って出た。当初、懐疑的であったウォルターも、ブライアンの奮闘ぶりを眺めているうちに、彼に心を開くようになり、ブライアンとウォルター、エバの3人は司法制度の不備及び黒人への差別意識という難敵と闘っていくのだった…。
・本作は「全米最注目の人権弁護士」ブライアン・スティーヴンソン本人が2014年に発表したノンフィクション『黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪』を原作としている。
・根深い人種差別による恣意的な判決に対する再審議を描いた本作のラストには、実際の人物の近影が映し出されるが、本作が1990年代前後と近年の事件であること、また、本作の登場人物てちは、つい数年前まで冤罪に苦しんでいることを問題提起している作品である。
・監督は『ショート・ターム』など本作がブリー・ラーソンと3作目の共作となり、次作品にマーベル・ユニバースの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』が控える、デスティン・ダニエル・クレットン。

②結び…本作の見処は?
◎: 137分と長尺作品となるが、事件の核となるシーンに特化した作品構成により、集中力を切らさずに重厚なテーマを描いている、
◎: 他の死刑囚の最期の場面を描くシーンは、心の平穏を求める死刑囚の葛藤が描き出され、やるせない不条理さを感じずにはいられない。
○: 冤罪による死刑囚やその家族だけではなく、虚偽の証言をさせられた囚人や、社会格差が甚だしい地域にて、でっち上げの求刑を求める白人検察側の立場も描いている点に好感が持てる。
○: ブルーカラー系の配役が多いマイケル・B・ジョーダンであるが、スーツ姿による凛とした弁護士を熱演。
×: 原題「Just Mercy」に対して「黒い司法」「 0%からの奇跡」と重ねる邦題に幻滅。本作の登場人物は、冤罪の撤回を諦めていないし「奇跡」と呼ぶほど、ハッピーエンドではない。黒人死刑囚に対する誤認の高さは、現在も引きずる闇である。
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