祈り 幻に長崎を想う刻(とき)の作品情報・感想・評価(ネタバレなし)

「祈り 幻に長崎を想う刻(とき)」に投稿された感想・評価

田中千禾夫の戯曲(岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞受賞)「マリアの首」の映画化。
1945年8月9日、広島に次ぐ2発目の原子爆弾が長崎市に投下され、東洋一の大聖堂、浦上天主堂も崩壊。それから12年、天主堂跡から被爆したマリア像を運び出す人たちがいた。首謀者はカトリック教徒の二人の女性であった。
被爆した浦上天主堂が撤去されることになった。それでは長崎には記憶されるべき「原爆ドーム」に相当する記念物がなくなってしまう。そこで秘かにマリア像を運び出し、隠れ家に祀ろうとしていたのだ。
本作には、カトリック教徒、傷痍軍人、娼婦、やくざ、隠れ原爆症患者といった人たちが登場する。「原爆反対」を唱える学生活動家が、隠れ原爆症患者の部屋を訪問する。学生は隠れ原爆症患者から、「原爆反対ではなく、戦争反対なのだ」との悲痛な声に絶句する。そこに本作のテーマを見ることが出来る。その声を説得力のあるものにする人間群像であり、登場人物は日陰者ばかりなのも、戦後日本の高度成長から置き去りにされた人たちなのだと気づくだろう。
極限まで練り上げられた詩的で哲学的な台詞、そして表現力のある演技。美しく、密度の濃い110分。