菩薩

THE COCKPITの菩薩のレビュー・感想・評価

THE COCKPIT(2014年製作の映画)
4.0
ドラクエⅢで言えば遊び人→賢者への転職の一部始終、要するにホモ・ルーデンスからホモ・サピエンスへと至るその過程。遊戯から創作へと移るその過程の中で、彼らの目つきも明らかに変貌を遂げる。貴方はもう忘れたかもしれないが、その狭い四畳半(たぶん六畳だけど)はかつて清貧な恋人達の語らいの場であり、フォークの枕詞の一つでもあり、赤い手拭いはマフラーの代わりだった。だが時は経ち、今じゃビート一つで世界へと飛び、手拍子一つであっちの世界へと翔ぶ操縦席へと姿を変えた。手っ取り早く酔う為の安酒は気分高揚の為のエナジードリンクに代わりに、質屋に入れては出し入れては出しを繰り返していたオンボロギターは指先一つでビートを刻める四角いマシンへと変わった。楽器の経験が無くとも、音楽的な知識や教養が無くとも、カッコイイと思える音を掘り出せるセンスと、言葉を巧みに操れる感性があれば、誰だって「音楽家」になれるSFの様な時代に突入しているのだ。2011年、SIMI LABの1stが出た時に確かに感じた何かが変わる手応え、そして忘れ得ぬ下北沢のあのマンションの一室、あの夜作ったEPはもはや完全なる黒歴史、若かったあの頃、確かに怖いものなど無かったのかもしれない…そう…「楳図かずお」でスベり倒すOMSBの様に…。いけ好くかいけ好かないかで言えば当然いけ好かない、だが0から1が生まれて行く瞬間に感じる感動と、彼等の真剣な眼差しは観る者の心を確かに撃つだろう。帰りはちゃんと「Think Good」らへんを聴いて帰ると思いきや、EVISBEATSを聴いて帰る天邪鬼な俺であったが、確かにその心はゆれていた。
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