ちろる

わたしはマララのちろるのレビュー・感想・評価

わたしはマララ(2015年製作の映画)
3.9
わたしが彼女のニュースの一報を耳にした時、まさか今のこの時代に同じ地球で起った事件だと思えなかった。
到底思いたくなかった。
女子に学校教育を!
まだ若く幼い体で勇気を振り絞ってパキスタンの未来のために立ち上がった少女の頭を、銃弾が撃ち抜いた。
女なんぞに教育など絶対に許さないという教えをまるでイスラムの教えだと言わんばかりに唱え続けるタリバンの偏った倫理観。
毎日毎日、街に響き渡るラジオ放送という名のプロパガンダ。
この不自由すぎる国に生まれた故に、世界では当たり前の事が、まるで狂人のように扱われて国を追われることになったマララの家族。
このドキュメンタリーはそんなマララとその家族の今と振り返りを丁寧に描いた作品である。
あのまだ若い少女の中にどのような力強い信念が、隠されているのだろうとこの事件に関連する記事を読む度に思っていたけれど、家族といる間のマララは、少しだけ負けず嫌いなだけのどこにでもいるごく普通の少女であった。
マララは決して弱音を吐かない、悲しみも口にしないのだけど、そんな内面にも掘り下げて、インタビューしていくことによって見えてくる彼女の恐れや悔しさも見え隠れする。
そういう部分を見たくて観た作品ではないけれど、結果的にそんな部分を掘り下げたこのドキュメンタリーにホッとしたわたしがいた。
その昔、アフガンの国で声を上げて兵士たちの心を奮い立たせた伝説の少女「マラライ」の物語を繰り返し言い聞かせて、父は生まれたての長女にマララと名付けたのは偶然なのか、運命なのか。
「奴隷として100年を生きるより、獅子として1日を行きたい。」
人間が人間として生まれ落ちた命、誰かに操られる筋合いなんて決してない筈だ。
女だから男だから、宗教や国で生き様を制限されることが正しいはずはない。
生きにくい世界の中で自らの道を切り開いていったマララの父の物語もまた同じくらい壮絶ではあった。
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