リンドグレーンの作品情報・感想・評価 - 3ページ目

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「リンドグレーン」に投稿された感想・評価

小本

小本の感想・評価

4.0
 未来過去現在の時間軸が混ざる映画は多いが、これは本当に見事。手紙を寄せる子供達の声は次第に、過去の彼女自身であり将来の子供でもあり、ただの他者ではないのだということに気づかされる。一切の説明的台詞を排して状況に放り込まれるヒロインの表情が素晴らしかった。無邪気で闊達な少女時代から疲弊した母親の姿までをごくごく自然に体現している。赤児に与えられない乳房の痛みや、泣き声の意図が掴めない不安など、日常的に見過ごされそうなディティールも多く心掴まれた。人生の
、特に女性の不安定さ逞しさが描かれており、今の時世にも響く批評的な側面もある。カメラはもう少し安定していてもいいのではも思ったが。終盤に呟かれる「そっちに行っていい?」から幸福なエンドロールまですごく感動した。孤独なダンスもよかった。
薫薫

薫薫の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

仕事についた、恋をした、男を知った、妊娠出産、別離、育児、こうした流れで人は否応なく大人になってゆく。はずなのだが彼女の姿はまるで「ぼうけんのたび」を続ける子どものようだ。見ていてハラハラせずにいられない。「どうして子どもの心がわかるのですか」「それはな、わしが今でも子どもだからじゃよ‥ふっふ」フェミニズムくさいのと福祉国家アピールでマイナス1
将来 作家リンドグレーンとなる16歳のアストリッドは小さな新聞社に雇われる。自分が一人前になったような気がして有頂天になりお下げの髪をフラッパーにして編集長ブロムベルイを積極的に誘う。
ひっそりと産んだ赤ん坊を里親に預け街に帰る彼女は断乳のため胸にきつく布をまくけれど 溢れ出し衣服を濡らす乳。そして2歳半になった我が子ラッセにとって大好きな″ママ″は里親マリーだった。
切望していたラッセとの暮らしは寒く貧しくトイレは中庭、風呂は外の共同浴場。壁紙の黒いちごを食べる真似をするアストリッドと少しずつ心を開くラッセ、小さなベッドで寝ていたラッセがある晩「そっちに行っていい?」とアストリッドのベッドに入ってくるところ 感動でした。
ブロムベルイはアストリッドに誘われた時一度は踏みとどまり「家に帰れ」と言う。若くなくても恋の始まりは不器用で、結婚を約束し生まれた赤ん坊に会いに行く誠実さもある。アストリッドにふられた時「僕の何が悪かった?年齢か?」と問う。彼女はブロムベルイが今まで見てきた女たちとは大きく違っていて、彼がアストリッドの苦しみを理解出来なかったのはこの時代の男性の限界でもあった。庇護され愛される者だった少女が守るべきものを得て力強く人生に踏み出していく物語に胸が熱くなります。
iceblue

iceblueの感想・評価

4.2
ちょっと遅れをとったら取り戻せなくなってすっかり脱落…
反応遅くてごめんなさい。
また細々マイペースでやっていきます😅
 
あんまり映画館にも行けてないのですが、何本かは行きました。岩波ホールでリンドグレーンが!と思い神保町へ行ったのも久しぶり。
 
女性には特におすすめしたい良質なドラマでした。型にはまらず頑固で情熱あふれる少女アストリッド。作家になるまでの波乱の人生を丹念に描いていて見応えあります。
育ったスモーランドの森の、素朴で厳しい自然豊かな暮らしはやかまし村の舞台にもなっているらしい。
そしてきらりと光る文才が彼女の運命を動かし始める。若い彼女には険しい道へと…。
 
主役のアルバはあの巨匠ビレ・アウグスト監督の娘さんだとか。活力あふれる熱演に釘付け。時々ハッとするような美しい表情が印象的。
  
我が子のエピソードと親との関係の変化が特に心に残るのは、女性監督の丁寧な目線によるもの。
愉快痛快な児童文学を生み出した作家を形作ったものは何か。なぜ子供の気持ちが理解できるのか。いちファンとしてその背景を描きたかったそうです。
 
Iroihs

Iroihsの感想・評価

5.0
アストリッドの感情が動くのを感じるたび 胸が締め付けられる。不安や 期待や 悲しみや よろこびを 彼女と同じ呼吸で 歩幅で。踊るし 叫ぶし 涙する。まなざし!

このレビューはネタバレを含みます

長靴下のピッピの作者として有名な、女流児童作家アストリッド・リンドグレーンを描いた映画ということで足を運んだが、彼女が児童文学を執筆するシーンが全くなく少し驚いた。でも不満には感じなかった。アストリッドの下地となる時代を、いとも生々しく描いていたからだ。

映画の中では荒涼とした北欧の農村のつましい生活や、厳格な母親が描かれている。しかし実際のアストリッドには、明るく近所の大人にも子どもにも慕われる父親と、父親と同級生で、学生時代には優等生で通っていた母親がいたらしい。母親は厳しさも持ち合わせているが、それほど束縛の強い人ではなく、大らかでもあったらしい。そして兄が一人と、妹が二人。両親は農場を経営していて、人を雇用もしていたらしいから、それほど貧しいわけではなかったようだ。

アストリッドは、第二子の中間子らしく、なかなか意志が強い。思い切りもよくて、若いころはじゃじゃ馬、そしてモダンな女性で、若さも相まって様々なことを反芻するように考えてから行動する作家先生らしさはほとんどない。

学校を卒業すると18歳で、街の個人経営の小さな新聞社で、記事の校正や、時には取材などに行きながら、新しい世界に触れ、そして新聞社の上司で経営者の離婚調停中の中年男性と体を交わして、赤子をはらむ。時は1920年代、地方の農村では不義姦通には厳格で、また男性側の離婚が成立していなかったこともあり、アストリッドは世間の目をそらす意図もあり、首都・ストックホルムに、秘書の勉強と出産のために旅立つ。

そして、不義の赤子をデンマークの里親に預けて勉強し、やがて電話交換手のような仕事をしつつ男性の離婚を待ち続けるが、想定より長い時間がかかり、そのうち相手への気持ちが離れ、生まれ育った街にも帰らずに、出版社のタイプ打ち等で働きはじめる。ところがやがて、デンマークの里親が体を壊して、実子の男の子を引き取ることになり、母一人子一人で都会で働くシングルマザーになる。

のちに国や世界を代表することになる女の子が若かりし時代、古い慣習を乗り越えて思いのまま生きて、時に不遇に悩み苦しみ、やがて母親となり、女性が一人で生きていくのが難しい時代に、必死に生き抜く赤裸々なストーリー。

母親と今ひとつ噛み合わない理由や、男性との離婚に至る思いの変遷、長靴下のピッピの挿絵を担当する女性との関係など、描いてほしい箇所をしっかり描きこんでいないように見えるのが惜しいものの、この女性作家の創作の源流に触れられた喜びを感じた。

また、アストリッドがリンドグレーンになってからのことは、ほのめかしのようなものでしかなく、ほとんど描かれていない。おそらくそれは、リンドグレーンが作家になってから、とても積極的にメディアに登場し、様々な発言を行って国民的な支持を得る存在になっていったからで、スウェーデンでは作家としての彼女のことは誰もがよく知っていたからではないかと思う。

1907年に生まれ、2002年にこの世を去ったアストリッド・リンドグレーン。並走する存在だった近隣のフィンランドのトーベ・ヤンソン。彼女たちより前に、ニルスの不思議な旅を描いて、北欧の女流童話作家の先鞭をつけたセルマ・ラーゲルレーヴのことなどもつい思い起こす。

また、リンドグレーンの作品はピッピと、山賊の娘ローニャぐらいしか読んでいないが、特に処女作のピッピは、設定や序盤の風呂敷の敷き方は見事で愉しい作品だが、後半にかけて、ややとっ散らかって、まとめ切れていない印象があったが、それは若きアストリッド・リンドグレーンがまず動き、それほど先々のことを考えこまない、行動の人で、演繹的な作風だったからではないかと思う。

女性が活躍しずらい時代に生まれて、ひととき理解者のいない闇の底に落ち込みながらも、そこから光の中へと這い上がったアストリッドに、最晩年に寄せられた子どもたちの合唱が流れるエンドロールが進むにつれ、ふと回想を余儀なくされて、また文字のテロップがにじんでしまった。
柊

柊の感想・評価

3.1
リンドグレーンの作品は、ストーリーもさることながら、登場人物達の住む自然描写や北欧ならではの景色や風習などどれもみんな好きだった。

でも彼女の人生はそんな牧歌的な作風とはまったく違うし、10代での不倫妊娠の情報はインプットして鑑賞したけど思っていた以上に魂抜けた。

編集長何するねん!!怒💢
っていうか、小娘何するねん!!って感じ。
耳障りのいい音楽と時々挟まれるキンポウゲ咲き乱れる美しい風景で、誤魔化されそうになるけど、やってることは下衆い。結果オーライで、名作児童文学たくさん書いたけど、作品と人格は別もんなんだな。
両親、マリーなどなど周りの人におんぶに抱っこで…リンドグレーン氏に巡り合うけど、彼が良い人だったのでしょう。

そんな感想でした。
「長靴下のピッピ」作者の半生を描いている作品。今何故この地味っぽい映画なのかと考えながら鑑賞した。
優れた子どものための文化、児童文学がたくさん生まれたスウェーデン、フィンランド、デンマーク、100年前にも今と同じように日常を必死に生き夢を実現した人がいる。まだ姦通罪などがある時代に不倫やシングル出産もしながら子どもを育てるということ。現代の差別や偏見とは想像もできない。それでも子どもに暴力を振るったりしないことや自然の中でのびのびと育てる事を遺している。読者の子どもたちと往復書簡を交わしながらはちゃめちゃでも頑張って生きろと伝えている。出産の辛さ、シングルの辛さ、里親の様子も痛いほど描いているのはやはり福祉国家の作品だと納得した。虐待やネグレクトであふれている現代。だからいまなのだ

里親のマリー役の表情の演技素晴らしく際立っていて惹かれた。
『はるかな国の兄弟』を読んで思いました。人生にはどうしてもやらなければならないときがあるのだと--。

このレビューはネタバレを含みます

『メアリーの総て』のようなドキュメンタリードラマを期待していたが、かなりの割合が濡れ場や不倫に関するシーンである上に、作家としてのAstrid Lindgrenはほとんど描かれていなかったのが残念…
一方で、一女性の生きる姿や家族に自分を受け入れてもらうことと自分の子を受け入れてもらうことの差、なにを持って母たり得るのかということがしっかりと描かれている、あるいは問題提起されている点は好きでした。